授賞式写真

第16回高松宮殿下記念世界文化賞受賞者発表

2004年 6月 8日
第16回高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者決定
アメリカの彫刻家ブルース・ナウマン氏、
イランのキアロスタミ監督など5人

毎年、世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(財団法人 日本美術協会主催)の第16回受賞者5人が、6月8日早朝(日本時間午前3時)、ベルリン、東京など世界6都市で発表されます。

今年は、アメリカの彫刻家ブルース・ナウマン氏(62)、イランの映画監督アッバス・キアロスタミ氏(63)などの5部門5人が選ばれました。
また、今年で第8回を迎える若手芸術家奨励制度の対象団体には、ドイツ、チェコ、ポーランドの3カ国の若手音楽家で構成する「中央ヨーロッパ(中欧)青少年サウンド・フォーラム」が選ばれました。
受賞者5人と若手芸術家奨励制度に選ばれた団体は、6月8日正午、ベルリンの日本大使館で開かれる受賞者発表記者会見で初めて紹介されます。授賞式典は10月21日、東京・元赤坂の明治記念館で行われ、5人の受賞者には総裁 常陸宮殿下からそれぞれに顕彰メダルが、理事から賞金1500万円が贈られます。


第16回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者
THE 2004 PRAEMIUM IMPERIALE RECIPIENTS

絵画部門:ゲオルグ・バゼリッツ Georg Baselitz (ドイツ)

彫刻部門:ブルース・ナウマン Bruce Nauman (アメリカ)

建築部門:オスカー・ニーマイヤー Oscar Niemeyer (ブラジル)

音楽部門:クシシュトフ・ペンデレツキ Krzysztof Penderecki (ポーランド)

演劇・映像部門:アッバス・キアロスタミ Abbas Kiarostami (イラン)


高松宮殿下記念世界文化賞 Praemium Imperiale

高松宮殿下記念世界文化賞は、財団法人 日本美術協会(総裁 常陸宮殿下、会長 瀬島龍三)が1988年、前総裁 高松宮殿下の「世界の文化・芸術の普及向上に広く寄与したい」というご遺志を継ぎ、協会設立100年の記念事業として創設したものです。国際理解の礎となる文化芸術の発展に貢献した芸術家に感謝と敬意を捧げ、その業績を讃えるもので、翌1989年に第一回の授賞が行われました。
受賞者の選考は、6人の国際顧問が主宰する各専門家委員会から推薦された絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5部門の候補者を日本の選考委員会で検討し、各部門1名の受賞者を理事会で最終決定しています。
推薦委員会を主宰する国際顧問は、ウンベルト・アニエリ(伊フィアット会長)、レイモン・バール(元仏首相)、エドワード・ヒース(元英首相)、中曽根康弘(元首相)、リヒャルト・フォン・ワイツゼッカー(元独大統領)、ウィリアム・ルアーズ(米国国連協会理事長)の各氏です。
国際顧問を退任されたヘルムート・シュミット(元西独首相)、ジャック・シラク(仏大統領)、デイビッド・ロックフェラー(米)、デイビッド・ロックフェラー・ジュニア(米)の各氏も、名誉顧問としてご協力いただいています。
受賞者発表の会場は、パリ、ロンドンなど各国際顧問の拠点都市を毎年巡回し、受賞者や国際顧問が出席して記念行事が行われます。授賞式典は10月、総裁の常陸宮殿下、同妃殿下のご臨席のもと、東京・明治記念館で行われ、各受賞者に感謝状、メダル、賞金1500万円が贈られます。

財団法人 日本美術協会 The Japan Art Association

財団法人 日本美術協会は、1887年(明治20年)に設立された日本で最も歴史ある文化財団です。東京・上野公園内に上野の森美術館を運営し、美術展を企画、開催しています。
毎年行われる「上野の森美術館大賞展」「VOCA展」などは、若手芸術家の登竜門として位置づけられ、多くの才能を支援する一方、「ニューヨーク近代美術館展」など多彩な企画展で美術ファンに親しまれています。また、協会は代々、皇室から総裁を戴いています。初代の有栖川宮熾仁殿下以降、有栖川宮威仁殿下、久邇宮邦彦殿下、高松宮殿下が、そして1987年から常陸宮殿下が総裁を務められています。


絵画部門:ゲオルグ・バゼリッツ Georg Baselitz
1938年1月23日、旧東ドイツ・サクソニー州ドイッチュバゼリッツ生まれ

ゲオルグ・バゼリッツは、因習の打破を常に指向してきた画家だ。初期には、人物や動物の体を切断し、不自然にくっつけた「破損絵画」シリーズを展開。1969年からは、モチーフから自動的に連想される「意味」や「解釈」を拒絶するため、人物や風景の上下を逆転させて描く「さかさま絵画」の手法にたどり着く。取り上げるモチーフは、美術史やロシア社会主義、自身の生い立ちなど実に多様で、近年は彫刻や木版画なども手がけている。美術史に造詣が深く、200点に上るアフリカ彫刻のコレクションでも知られている。メキシコ、パリ、ロンドンなど、世界中で個展が開かれており、2004年にはボンで大規模な回顧展を開催。

彫刻部門:ブルース・ナウマン Bruce Nauman
1941年12月6日、アメリカ・インディアナ州フォート・ウェイン生まれ

ブルース・ナウマンは彫刻やネオン管、ビデオなど多彩な素材を駆使し、60年代後半からモダンアート界を代表する“鬼才”として、絶えず社会にメッセージを発信し続けてきた。発想は奇抜で、創作スタイルは広範。「100生きて死ね」(84年)などのネオン作品では言葉で、「目・鼻・耳をつつく」(94年)などのビデオ作品では超スローモーションで撮影した人の顔など身体でメッセージを表現し、素材を自在に操る。93年、彫刻を対象とするイスラエルのウルフ賞、99年ヴェネチア・ビエンナーレの金獅子賞など数々の国際賞を受賞。米誌タイムで今年、「最も影響力のある世界の100人」の中に選ばれるなど、彼の創作への関心と期待は芸術界を超えて広がる。

建築部門:オスカー・ニーマイヤー Oscar Niemeyer
1907年12月15日、ブラジル・リオデジャネイロ生まれ

オスカー・ニーマイヤーは96歳の今も第一線の設計者として、母国ブラジルをはじめ、世界各地の建設プロジェクトの設計を手掛けている。師ルシオ・コスタ、ル・コルビュジエらと共に1943年、旧教育保健省(リオデジャネイロ)、52年に国連本部(ニューヨーク)を設計。そして、50年代後半にはブラジルの一大国家プロジェクト、新首都ブラジリアの建設で、大統領府や国会議事堂、最高裁判所など主要建築物の設計を一手に手掛ける。曲線を駆使した独創的な発想は衰えを知らず、近年もリオ郊外にニテロイ現代美術館(96年)、クリチバにニーマイヤー美術館(2002年)などを設計。現在進行中のベトナム・ハノイの迎賓館やリオの海中博物館など、その構想は尽きない。

音楽部門:クシシュトフ・ペンデレツキ Krzysztof Penderecki
1933年11月23日、ポーランド・ジェーシェフ近郊生まれ

クシシュトフ・ペンデレツキは、1960年に発表した「広島の犠牲者に捧げる哀歌」で国際的な注目を集めた。腕などでピアノの鍵盤を押さえて不協和音を作り出すトーン・クラスター技法や、弦楽器を打楽器的に使用する前衛的な手法を駆使した音楽が特徴だったが、徐々に宗教的、伝統的な色合いを強め、65年に代表作である「ルカ伝による受難曲」を発表。他の代表作に「ヴァイオリン協奏曲」、オペラ「黒い仮面」、「アダージョ」など。作曲だけでなく、指揮者としても活躍しており、これまでにベルリン・フィルやニューヨーク・フィルなど著名なオーケストラを指揮。また、若手音楽家の育成にも力を注いでいる。

演劇・映像部門:アッバス・キアロスタミ Abbas Kiarostami
1940年6月22日、イラン・テヘラン生まれ

イラン映画を代表する監督の一人、アッバス・キアロスタミは、1987年に素人の子供を主人公にした「友だちのうちはどこ?」を発表し、注目を集めた。素人俳優ばかりを起用するのが特徴だが、彼らの伸びやかで、カメラの存在を忘れさせるリアルな演技に、観客は驚かされる。その後、「友だちのうちはどこ?」からさらに「そして人生は続く」「オリーブの林をぬけて」などイスラムの厳しい社会や自然を詩的に描いた作品で国際的な評価を固め、1997年、「桜桃の味」でカンヌ国際映画祭パルムドール(グランプリ)を受賞。最近は「10話」や「ABCアフリカ」「5 five」など、デジタルカメラの特性を最大限に活かした作品づくりで話題を呼んでいる。



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