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第26回(2023年) ハーレム芸術学校(アメリカ)

[ 選考担当 ] ヒラリー・ロダム・クリントン国際顧問(アメリカ)

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 ハーレム芸術学校は、米国ニューヨークのハーレム中心部で毎年1,600人の生徒を指導している文化芸術センターである。

 1964年にソプラノ歌手のドロシー・メイナーによって創立された。教会の地下で生徒にピアノを教えたのが始まりで、徐々に生徒が増え、その後、資金を募って、1970年代に約3,400㎡の施設が建設された。

 生徒は2歳から18歳が対象で、入学は自由。オーディションが必要な場合も芸術への関心を確認する程度で難しいものではない。生徒の80%がアフリカ系とラテン系の米国人。75%が経済的支援を受けている。年間予算は550万ドルで、その7割を寄付金で賄っている。トランペット奏者のハーブ・アルパートも2010年以来、計1,750万ドルを支援している。

 「メイナーは、地に足を着けて若い人たちに創造性と芸術を探求する場所を確保したいと考え、あらゆる分野を一つ屋根の下に集めて、ハーレムの若者たちが安心して創造性を発揮できる安全な空間を提供した。芸術は人間性の最大の表現。皆を一つにし、皆が自由であることを教えている」とジェームズ・ホートン校長は語る。

 生徒は学際的なトレーニングを通じて、音楽、ダンス、演劇、ビジュアルアート、デジタル・イラストレーション、マルチメディアなどを学ぶ。指導には、プロの音楽家や、世界中の舞台で活躍したダンサー、著名なコミック・ブック・アーティストらが当たり、ソフトウエアは将来の就職に備えて業界標準を採用している。

 「夢はブロードウェイ出演」という、ミュージカル演劇を学ぶ11歳の女子生徒は「ダンスのクラスも受講し、仲間との絆を楽しんでいる。指導したことがすぐにできなくても、先生は諦めることはない」と信頼している。

 2024年には創立60周年を迎えるが、さらに「足跡」の拡大を目指し、プログラムの開発を続けていく。矯正施設や刑務所に収容されている若者、ホームレスを含めた街のすべての人に質の高いプログラムを提供することや、オンラインでのオンデマンドプログラムの整備を検討している。若いアーティストの養成だけでなく、幅広く育成について考え、創造性を引き出す機会を提供することは、「創立者のビジョンを完全に実現する神髄」とホートン校長は語る。