トップ 若手芸術家 奨励制度 奨励対象⼀覧 クロンベルク・アカデミー財団(ドイツ)

第25回(2022年) クロンベルク・アカデミー財団(ドイツ)

[ 選考担当 ] クラウス=ディーター・レーマン国際顧問(ドイツ)

この記事をシェア

Kronberg Academy
© Patricia Truchsess von Wetzhausen

 クロンベルク・アカデミー財団は、新進気鋭の演奏家を育成するドイツ・フランクフルト近郊の文化財団である。

 20世紀最大のチェリスト、パブロ・カザルスの没後20周年に当たる1993年、チェリストのライムント・トレンクラー(現財団会長)が、カザルスの未亡人、マルタ・カザルス・イストミンやチェリストのムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(1993年音楽部門)と共に創立し、2004年に財団法人となった。

 「音楽は、すべての人に理解される世界言語であり、世界中の音楽仲間は芸術の純粋さを人類のために役立てよう」というカザルスの遺志を継ぐために、静かで落ち着いた環境のクロンベルクを本拠地に選んだという。トレンクラー会長は「音楽の遺産を世代から世代へと受け継いでいける場所、深く考えることができる空間です」と言う。

 現在は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノの4分野で、ソリストとして国際的キャリアを築く可能性のある若手演奏家(年間約35人)を対象に3-4年間、高度な訓練を行う。毎年、平均5-6人の学生を受け入れている。

 ギドン・クレーメル(2016年音楽部門)、アンドラーシュ・シフ、ダニエル・バレンボイム(2007年音楽部門)など世界的な音楽家が特別講師を務める。20年前から財団芸術顧問のクレーメルは「私の経験、感覚、知識を若い人たちと共有するのが目的。彼ら自身で解決策を見出せるようにしたい」と語る。

 千葉出身のヴァイオリニストで、2021年ミュンヘン国際音楽コンクール1位の岡本誠司は、2019年から学んでいるが、「世界中の伝説的な音楽家によるレッスンは、とても楽しい」。卒業生は、チェリストの宮田大を含む64人を数える。

 コンサート、公開マスタークラス、公開リハーサルも定期的に開催され、学生たちは世界的な音楽家と同じステージで演奏することによって、自分の能力を伸ばしながら、音楽に対する理解を深めていくことができる。

 2022年9月23日には、一流の音響と最新の設備を備えたコンサートホール「カザルス・フォーラム」(550人収容)がオープン。同財団はここを拠点にクラシック音楽界でさらに指導的役割を担っていきたいという。

 2020年6月に予定されていた初の日本ツアーは、コロナ禍のために中止になったが、2023年6月に日本で演奏する予定。