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第16回(2012年) スフィンクス・オーガニゼーション(本部:アメリカ・デトロイト)

[ 選考担当 ] ウィリアム・ルアーズ国際顧問 (アメリカ)

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黒人・ラテン系アメリカ人のクラシック音楽への参加を促進し、若手演奏者を養成するため、黒人のヴァイオリニスト、アーロン・ドワーキン氏(42歳)が 1996年に創設した。オーケストラの中で黒人は一人だったというドワーキン氏自身の体験や、コンサートの聴衆にも黒人・ラテン系が少ないことから、「クラシッ ク音楽での文化の多様性」を目指している。

毎年、弦楽器奏者のコンクールを開催し、優勝者はカーネギーホールで公演するほか、スフィンクス・シンフォニーのメンバーとして演奏するなど、黒人・ラテン系のプロ演奏者養成のための様々なプログラムを実施している。スフィンクス・シンフォニーのライブと放送を通じて年間200万人が演奏を聴くという。また、黒人人口が8割を占めるデトロイトの恵まれない地域の学校でのクラシック音楽の演奏と楽器指導も行っている。

創設以来15年、こうした地道な活動が実を結び、全米で注目される存在となった。スフィンクス出身者のクラシック音楽界への進出もめざましく、米国の主要オーケストラでわずか2パーセントだった黒人・ラテン系演奏者の比率が、現在は4パーセントに倍増した。創設者のドワーキン氏自身も「芸術教育の変革者」として脚光を浴び、オバマ大統領の「全国芸術政策委員会」のメンバーに指名された。

ヨーヨー・マ、故アイザック・スターンら著名音楽家の中にもスフィンクス支援者は多く、一緒に演奏し、指導している。スフィンクスではニューヨーク、シカゴ、ロンドンにも事務所を開設し、ベネズエラやロンドンの若手オーケストラの団体と協力関係を結ぶなど、国際的な活動も始めた。年間予算320万ドル(約2億5600万円)のうち6割を民間からの寄付で賄っている。

ドワーキン氏は「オーケストラの黒人・ラテン系演奏者が倍増したと言っても、まだ4パーセントにすぎず、道半ば。芸術的な優秀性を維持しながら、多様性を求め続けていきたい」と、さらなる活動拡大を目指している。