トップ 若手芸術家 奨励制度 奨励対象⼀覧 クレメラータ・バルティカ

第13回(2009年) クレメラータ・バルティカ

[ 選考担当 ] オットー・グラーフ=ラムスドルフ国際顧問

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バルト海沿岸のバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)のラトビア・リガ生まれの世界的ヴァイオリン奏者、ギドン・クレーメルが1997年、 「50歳の誕生祝い」として、バルト三国の優秀な若手演奏家を集めて結成。クレーメル自身がソリストと芸術監督を務め、今や、最も卓越した欧州の室内管弦 楽団の一つと称されるまでに成長した。

クレーメルは、この楽団の活動を通じ、自らの幅広い音楽経験をバルト三国の若手演奏家に伝えるとともに、旧ソ連からの独立後に高まったバルト三国の音楽・文化に対する独自の機運、帰属意識を育て、促進していく狙いも込めている。

団員25人(平均年齢 28歳)は、バルト三国での厳しいオーディションを通じて選ばれる。半数が結成当初のメンバー。楽団の組織はラトビア文化省に所属し、楽団員にはサラーが支払われる。ラトビア文化省を中心にリトアニア、エストニアの各文化省も資金面で援助(年間総額37万5000ユーロ)している。

バルト諸国のほか、世界各地を巡る年5回のツアーで計60のコンサートを開催し、様々な音楽祭にも出演。2004、07、08年の来日公演に続いて、今年11月には新プログラムを携えて名古屋、東京、大阪で公演する。

世界各地でのコンサートではクレーメルが一緒に演奏するが、ウラディーミル・アシュケナージ、サイモン・ラトル、ミッシャ・マイスキー、ヨーヨー・マら有名な指揮者やソリストとも共演している。

クレーメルは「私が強調するのは非常に単純なことで、“ありきたりの楽団”にならないことだ。楽団員にはいつも、リスクに立ち向かい、冒険し、レパートリーを広げ、真似ではなく解釈せよ、と指導している」と語る。

2002年には、『アフター・モーツァルト』のレコーディングでグラミー賞を受賞した。06年には、ザルツブルクで一晩にモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全5曲を演奏、そのライブ録音が今年7月に発売され、話題を呼んだ。

クレーメルは「資金不足で実現できない企画も多いが、今回の奨励金で一つか二つの企画を実行できる。楽団の真髄を示す冒険的な企画にしたいと意気込みを語った。