第27回(2024年) コムニタス・サリハラ芸術センター(インドネシア)
[ 選考担当 ] アジア推薦委員会
コムニタス・サリハラ芸術センターは、音楽、ダンス、演劇、文学、映画や美術などの多様なジャンルで表現活動を推進する、インドネシア初の民間複合文化施設。軍事政権下で芸術活動の自由を求めて1995年に誕生した組織のコムニタス・ウタン・カユ(KUK)が母体で、2008年、アーティスト、ライター、ジャーナリストらの支援で首都ジャカルタに設立された。「サリハラ」はクマツヅラ科の花の名に由来する。
活動の趣旨は、思想と表現の自由を守る芸術活動を推進し、多様性を尊重して、芸術的資源、知的資源を育成すること。そのために長期的な視野で実験的なプログラムを支援し、観客が批判的な目を養うことにも取り組んでいる。
センターでは、3,800平方メートルの敷地に、ブラックボックス型(舞台と客席が一体となった四角い空間)の室内劇場、ダンスと音楽のスタジオ、アートギャラリー、ショップ、カフェなどがあり、演劇やダンスの公演、音楽コンサート、展覧会、読書会、討論会、ワークショップなど、年間100件以上のプログラムを実施している。
また、他の民間組織と連携して、独自に各種のフェスティバルも開催。主なものに、優れた国内外の演劇作品を紹介する芸術祭、舞踊の伝統を見直すダンス・フェスティバル、現代作家に焦点を当てた文学・思想の祭典、一流の奏者が集うジャズ・コンサート、民族音楽と現代音楽を融合したフォーラムなどがある。
さまざまなプロジェクトで若い人材を公募し、分野を超えて芸術を学際的にまとめるところがサリハラ芸術センターの特徴。インスタレーションの展示会場で、伝統武術をベースにした舞踊を作品と一体となって演じるという新たな取り組みも行った。あらゆる芸術の動向に反応し、斬新なアイデア、新しい才能を発見する一方、観客が望むものを見つけやすくする工夫を施している。
ニルワン・デワント理事(統括キュレーター兼プログラム・ディレクター/詩人)は「プログラムに重点を置き、アートと批判的に関わりながら、地域とコミュニケーションをとる方法を考える必要がある。緊密に協力することで、表現の自由をより育み、新しい才能を紹介することができる」と語る。
公募以来、作曲や演奏活動を続けている若手ジャズ音楽家のジェイソン・モンタリオさんは、「追求したいことが自由にできる。その恩恵に応える責任が私たちにもある」と話す。