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第20回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者 発表 / 第12回 若手芸術家奨励制度 発表

2008.9.16

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優れた芸術の世界的な創造者たちを顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・財団法人日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)の第20回受賞者が決まり、ローマ、ロンドン、パリ、ベルリン、東京で発表されました。

第20回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者
THE 2008 PRAEMIUM IMPERIALE RECIPIENTS

■絵画部門    リチャード・ハミルトン  (イギリス)
■彫刻部門    イリヤ&エミリア・カバコフ   (ロシア)
■建築部門    ピーター・ズントー  (スイス)
■音楽部門    ズービン・メータ  (インド)
■演劇・映像部門  坂田 藤十郎  (日本)

第12回 若手芸術家奨励制度
■イタリア青少年オーケストラ
(本部 フィレンツェ郊外のフィエーゾレ音楽学校)

授賞式典は、日本美術協会 総裁の常陸宮殿下、同妃殿下ご出席のもと、10月15日(水)に東京・元赤坂の明治記念館で行われ、5部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られます。若手芸術家奨励制度は、9月16日、ローマでの受賞者発表の席上、奨励金500万円が贈られました。

絵画部門 Painting
リチャード・ハミルトン Richard Hamilton
1922年2月24日、イギリス・ロンドン生まれ

複数の美術学校で学んだあと芸術家としての活動を始める。1956年、アメリカに先駆けてポップ・アートの幕開けとされるコラージュ「いったい何が今日の家庭をこれほど変え、魅力的にしているのか?」を制作、その後も版画やコラージュ、デザインなどジャンルを超えた多様な創作活動を続ける。反芸術を標榜したマルセル・デュシャンを信奉。政治的メッセージを出すこともあり、最近では、ガンマン姿のトニー・ブレア前英首相を描いた「衝撃と畏怖」を制作、イラク戦争へのイギリスの派兵を批判した。ロンドン近郊のオックスフォードシャーの自宅兼アトリエには、大型のプリント機械やコンピューターを備え、86歳の今も創作意欲は衰えていない。

彫刻部門 Sculpture
イリヤ&エミリア・カバコフ Ilya & Emilia Kabakov
イリヤ 1933年9月30日 エミリア 1945年12月3日
現ウクライナ・ドニエプロペトロフスク生まれ

夫妻で、絵画やオブジェ、言葉、音などを用いた「トータル・インスタレーション」という表現手法で国際的に活躍する。イリヤは旧ソ連の社会主義体制当時、「学んだことを活かせる唯一の分野だった」絵本画家としてキャリアをスタート。緻密な画風で評価を確立するが、当局の検閲から逃れた「非公式芸術活動」の中心的存在でもあった。1980年代以降、西側で作品展が相次いで開かれるようになり、「共同キッチン」「トイレ」などソ連当時の生活をユニークな視点で風刺、批評した作品群で注目を集めた。「異常な状況の中で普通の生活をしようと努力している人々」が、夫妻の一貫したテーマ。「普通の人が持つ感情や反応と連携している」という姿勢が、時代や国境を越えて支持されるゆえんだろう。

建築部門 Architecture
ピーター・ズントー Peter Zumthor 1943年4月26日
スイス・バーゼル生まれ

建てる「場所」と「用途」に真摯に向き合い、ふさわしい「素材」選びに労を惜しまない。「オーダーメードのような建築」にこだわる。スイス南東部の州で歴史的建造物の保存・修復をする仕事を経て、建築家として独立。今も同じ州の小さな村ハルデンシュタインにアトリエを構え、その作品はスイスを中心に欧州に集中している。宗教建築から美術館、温泉施設、住宅にいたるまで、一貫して精神性の高さを感じさせる。昨年開館した「聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館」(ドイツ・ケルン)も、ローマ時代から脈々と続く歴史の継続性を、廃墟部分を生かすことで表現。さしこむ光と陰の微妙な使い方は、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に通じるようだ。

音楽部門 Music
ズービン・メータ Zubin Mehta
1936年4月29日、インド・ボンベイ生まれ

知性と経験に裏打ちされた豊かな音楽性、レパートリーの広さ、そして誰からも愛される人柄。その資質とバランス感覚において、当代随一の指揮者といわれる。ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、マーラーなど重厚な音楽を得意とする一方、オペラでも卓越した解釈を披露してきた。音楽の発展に寄与するべく、現代音楽の演奏にも積極的だ。半世紀にわたるキャリアで多くのオーケストラを率いてきたが、終身音楽監督を務めるイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団との関係は家族のように深い。中東和平を願い、ユダヤ人とアラブ人が同席するコンサートを行うなど、数々の人道的活動でも高い評価と期待を集めている。

演劇・映像部門 Theatre/film
坂田 藤十郎 Sakata Tojuro
1931年12月31日、京都生まれ

はんなりした色気、戯曲の深い解釈、芸容の大きさで現代を代表する歌舞伎俳優。上方和事の二枚目から立女形の役どころまで幅広い。海外公演も多く、歌舞伎のドラマ性、独特の美を世界に発信している。1941年、二代目中村扇雀を名乗って初舞台。90年、三代目中村鴈治郎を襲名し、2005年上方和事の祖、初代坂田藤十郎の名跡を231年ぶりに襲名、名実ともに上方歌舞伎を象徴する存在に。「初代が和事芸を創造したように、私も自身の芸を作り上げたい」と、独自の歌舞伎の創造に意欲を燃やす。畢生(ひっせい)の当たり役、「曽根崎心中」のお初は通算1200回を超え、作者の近松門左衛門の作品を上演する「近松座」を旗揚げ。喜寿を迎え、さらなる芸の高みを目指す。

第12回 若手芸術家奨励制度
2008 GRANT FOR YOUNG ARTISTS
イタリア青少年オーケストラ(イタリア・フィエーゾレ音楽学校)
Italian Youth Orchestra

選考:ランベルト・ディーニ国際顧問(イタリア)
Selected by International Advisor, Lamberto Dini(Italy)

フィレンツェ郊外のフィエーゾレ音楽学校に所属し、プロのオーケストラ演奏者を養成するための訓練部門。1984年にリッカルド・ムーティの指揮による演奏会で正式に発足した。オーディションに合格した18歳から27歳までの70~90人が2年間、訓練を受ける。受講料、寮費、食費は無料。最高20%までは欧州連合(EU)加盟国以外の出身者の参加が可能で、昨年から日本人も1人参加。クラウディオ・アバド、ルチアーノ・ベリオ、ズービン・メータ、クシシュトフ・ペンデレツキなどの世界的指揮者も指導に当たっている。訓練期間中、欧州各地でのコンサートツアーや、一流オーケストラとの共演も行ない、欧州内での評価も高い。すでに1000人以上の卒業生が、イタリアと欧州のオーケストラで活躍している。