第34回
2023年
演劇・映像部門
Robert Wilson
ロバート・ウィルソン
前衛的な作風で知られる米国の演出家。舞台美術や照明、ドローイング、彫刻、ダンスの振り付けも手掛ける。27歳のときに実験的パフォーマンス集団「バード・ホフマン・スクール・オブ・バーズ」を設立。『聾者の視線(まなざし)』(1970年)で注目を集めて以来、米国の作曲家フィリップ・グラス(2012年世界文化賞受賞者)と共同制作した独創的オペラ『浜辺のアインシュタイン』(1976年)で国際的な評価を得る。アルヴォ・ペルト(2014年音楽部門受賞者)、ミハイル・バリシニコフ(2017年受賞者)などともコラボレーション。プッチーニ『蝶々夫人』など名作の演出も多数。1981年、助成金で日本に6週間ほど滞在し、「米国の芸術家よりも日本の芸術家や美学に、より親近感を覚えた」。ヴェネツィア・ビエンナーレ彫刻部門金獅子賞など受賞多数。8つの名誉博士号を持つ。自身が1992年にニューヨーク州ロングアイランドに設立した芸術施設「ウオーターミル・センター」の芸術監督を務め、そこに住む。
略歴
前衛的な作風で知られる米国の演出家。舞台美術や照明なども手掛け、ビジュアルアーティストの第一人者でもある。ドローイング、彫刻、家具のデザイン、ダンスの振り付け、作庭、建築など創作活動は幅広い。
米南部テキサス州で弁護士の家庭に生まれる。画家になるのが夢だったが父親に反対され、テキサス大学で経営学を学ぶも中退。インテリアや建築を学ぶためニューヨークに移り、抽象バレエ・ダンスの振付家、ジョージ・バランシンやマース・カニングハム(2005年世界文化賞受賞者)らの作品に出会い、影響を受ける。
1968年、27歳のときに実験的パフォーマンス集団「バード・ホフマン・スクール・オブ・バーズ」を設立。十代の時に吃音を治してくれたダンス教師の名前に由来している。
『聾者の視線(まなざし)』(1970年)で注目を集めて以来、米国の作曲家、フィリップ・グラス(2012年音楽部門受賞者)と共同制作し、1976年にフランスのアヴィニョン演劇祭で初演された独創的オペラ『浜辺のアインシュタイン』で国際的な評価を得る。物理学者アインシュタインのイメージを音楽と空間で表現した作品で、歌詞は数字とドレミのみ。日本でも2022年、約30年ぶりに再演され、人気を博した。
他にもアルヴォ・ペルト(2014年音楽部門受賞者)、ミハイル・バリシニコフ(2017年受賞者)など多くのアーティストともコラボレーション。プッチーニの『蝶々夫人』やヴェルディの『椿姫』など名作の演出でも名を残している。
1981年、助成金で日本に6週間ほど滞在した時、初めて能の舞台を観劇、衝撃を受けた。米国の芸術家よりも「日本の芸術家や美学に、より親近感を覚えた」と語る。その後、能楽師の観世栄夫、歌舞伎俳優の坂東玉三郎(2019年受賞者)、舞踊家の花柳寿々紫らと作品作りなどを通して交流。パリ・オペラ座で上演された『蝶々夫人』を手掛けた際は「禅問答のようなやり方で、内面を感じながら演出した」という。
「日本での6週間が私の人生を永遠に変えた」と話し、今回の受賞を「故郷に連れ戻してくれるようなもの」と表現する。
ヴェネツィア・ビエンナーレ彫刻部門金獅子賞など受賞多数。アメリカ芸術文学アカデミーに選出され、8つの名誉博士号を持つ。フランスの芸術文学勲章コマンドゥール、レジオンドヌール勲章オフィシエ、ドイツの功労勲章一等功労十字章を受章。
自身が1992年にニューヨーク州ロングアイランドに設立した芸術施設「ウォーターミル・センター」の芸術監督を務める。
略歴 年表
大回顧展『ロバート・ウィルソンのビジョン』(ボストン美術館、サンフランシスコ近代美術館、ヒューストン現代美術館)
オペラ『蝶々夫人』(パリ、オペラ・バスティーユ)
オペラ『ポエトリー』(ハンブルク、タリア劇場)
レジオンドヌール勲章オフィシエ(フランス)
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『浜辺のアインシュタイン』 2012年
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フィリップ・グラスと 2012年
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『ある男への手紙』 2015年
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『アダムの受難』 2015年
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コレクション・アーカイヴにて 2023年5月
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オフィスにて 2023年5月