第33回
2022年
彫刻部門
Ai Weiwei
アイ・ウェイウェイ 艾未未
現代中国を代表する美術家、建築家。父は著名な詩人、艾青(アイ・チン)。北京に生まれ、文化大革命の影響下、新疆ウイグル自治区の過酷な環境で幼少期を過ごした。北京電影学院を経て1981-93年、米国に滞在しパーソンズ美術大などで学んだ。帰国後は地下出版や展覧会活動を通して中国前衛美術を支援。北京五輪(2008年)では通称「鳥の巣」のメインスタジアム設計に関わった。同年の四川大地震で、校舎の倒壊で犠牲になった児童たちの名簿を公表し、当局による拘禁や常時監視などが激化。2015年以降、ドイツ、英国、ポルトガルに移住。世界の主要美術館などで個展を開く一方、難民問題やコロナ禍、香港民主化デモに焦点を当てたドキュメンタリー映画を制作。自由と人権を尊重する社会へ、多様な表現を通して行動し続けている。
略歴
自由で民主的な社会を求め、自ら行動する中国出身の現代美術家・建築家。インスタレーション、建築、映像からソーシャルメディアでの発信まで、表現は多岐にわたる。鋭い社会批判や哲学的メッセージを含み、世界的に高く評価されている。
著名な詩人、艾青(アイ・チン)を父に、同じく詩人の高瑛(カオ・イン)を母に、北京で生まれた。一家は反右派闘争や文化大革命で下放され、新疆ウイグル自治区のゴビ砂漠に近い過酷な土地で幼少期を過ごした。1978年、北京電影学院に入学。1981年から12年間米国で暮らし、ニューヨークのパーソンズ美術大学などで学んだ。
帰国後の1995年、『漢時代の壺を投げ落とす』『遠近法の研究』など、既存の権威に一石を投じるパフォーマンスを展開。何ものにも与しない表現を掲げて、上海で『不合作方式(FUCK OFF)』展(2000年)を開くなど、中国前衛美術を擁護し、若手作家を後押しした。
また、国際展『ドクメンタ12』(2007年)への参加や、森美術館(東京)の『アイ・ウェイウェイ展―何に因って?』(2009年)など大規模個展を通し、世界のアートシーンで存在感を強めていった。
北京五輪(2008年)では主会場、北京国家体育場(鳥の巣)の設計に関わるも、「結果として政治的プロパガンダの一部になってしまった」として手を引いた。同年に起きた四川大地震の被害について、「政府に誰が亡くなったか問い続けたが、明確な回答がなかった」ため、自主調査を敢行。「規制のない工事」による校舎倒壊で死亡した児童5千人以上の名簿をブログなどで発表し、衝撃を与えた。
以降、当局による拘禁や常時監視などを経て、2015年、ドイツに移り、その後、英国とポルトガルで生活している。毎年のように、世界各地の主要美術館で個展を開催し、影響力は大きい。
23カ国40カ所もの難民キャンプを取材した『ヒューマン・フロー 大地漂流』(2017年)、コロナ禍で封鎖された武漢を記録した『コロネーション』(2020年)、香港の民主化デモに焦点を当てた『ゴキブリ』(2020年)など、近年はドキュメンタリー映画も精力的に制作している。「すべきことが明確になったら、行動しなければなりません。腐敗した人たちにとって、私は確かに危険な存在」と、今起きている人権の危機を世に問い続けている。
略歴 年表
北京に自宅兼スタジオを建築
個展『ソー・ソーリー』(ミュンヘン、ハウス・デア・クンスト)
光州デザイン・ビエンナーレ共同芸術監督(韓国)
英国王立芸術院名誉会員
個展『アイ・ウェイウェイ』(英国王立芸術院)
ドキュメンタリー『ヒューマン・フロー 大地漂流』を監督、ヴェネツィア国際映画祭出品、アカデミー賞最終選考リスト
ドキュメンタリー『ロヒンギャ民族』を制作
プッチーニのオペラ『トゥーランドット』の新作で演出家デビュー(ローマ歌劇場)
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『漢時代の壺を投げ落とす』1995年
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《ひまわりの種》2010年
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《永久自転車》2011年
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難民ボート《Law of the Journey》2017年
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レゴ作品《マラーの死後》2018年