トップ 受賞者一覧 ジュリアーノ・ヴァンジ

第14回

2002年

彫刻部門

Giuliano Vangi

ジュリアーノ・ヴァンジ

人間が抱える葛藤を地中海的な明るさと優しい感触の人体像で描くイタリアの彫刻家。最近はピサ大聖堂の祭壇など宗教的な仕事が多い。ジオットなどの芸術家を輩出したフィレンツェ郊外に生まれ、大理石に親しんで育った。一時、抽象彫刻を手掛けるなど、現在の具象スタイルを確立するまでには紆余曲折があった。イタリア・ペーザロ在住。2001年、箱根・彫刻の森美術館で回顧展開催。2002年春、静岡県にヴァンジ彫刻庭園美術館がオープンした。

略歴

ジュリアーノ・ヴァンジは、ブロンズ、木、多種の石材、金属など様々な素材を駆使しながら、独特な表情を持つ人体像を創作し、人間が抱える様々な葛藤を地中海的な明るさと優しい感触で描く彫刻家である。
「私は人間の葛藤を自分の闘いとして彫刻の中に追求し、人間の姿で表現すべきだと思い至りました。人間の内面、とりわけ苦悩を表現したいのです」
  最近は宗教的な彫刻の仕事が多い。昨年は、有名なピサの斜塔の隣にある大聖堂に大理石の説教台と祭壇を作った。また、南イタリア・プーリア地方に建設中の聖パードレ・ピオ教会にも、マグダラのマリアをテーマにした説教壇が収められる。この教会は、世界文化賞受賞の建築家、レンゾ・ピアノの設計で、同彫刻家の、アルナルド・ポモドーロ、同画家の、ロバート・ラウシェンバーグも参加している。
  「ピアノ氏との仕事は大変楽しいものでした。彼が私のアトリエに来て、何度もディスカッションしました」
  生まれはフィレンツェから20キロ離れたムジェロ。ジオットなどの芸術家を輩出したところだ。「3歳でフィレンツェに移り、大理石を手に育ちました。フィレンツェは美の宝庫であり、彫刻家になるのに影響を与えたかも知れません」という。ペーザロの美術学校で教えた後、28歳から3年間、ブラジルに滞在。一時、抽象彫刻を手がけるなど、現在の具象スタイルを確立するまでには紆余曲折があった。
  トスカーナ地方の良質で豊富な大理石の採掘場に近いピエトラサンタにアトリエを構え、朝7時にはアトリエに入る。「自分では30歳ぐらいの気持ちです。肉体的なエネルギーもアイディアもまだ十分あり、そのアイディアをすべて実現したい」と、71歳の今も精力的に制作活動を続けている。
  今年春には静岡県にヴァンジ彫刻庭園美術館がオープンした。。

略歴 年表

1931
フィレンツェ近郊バルベリーノ・ディ・ムジェロに生まれる
フィレンツェ美術学校で学んだ後、ペーザロ美術学校などで教える
1959-62
ブラジル滞在
1960
サンパウロ近代美術館で個展
1961
サンパウロ・ビエンナーレに出品
1962-63
イタリア彫刻巡回展(アメリカ)
1967
フィレンツェのストロッツィ宮で個展
1970
イタリア彫刻巡回展(ハノーバー、ヴェルツブルク、キール、ケルン、リスボン)
1972
「現代イタリア彫刻の全貌」展(箱根・彫刻の森美術館他)
1977
トリノ近代美術館他で個展。ドクメンタ(ドイツ・カッセル)に出品
1978
ヨーロッパ彫刻トリエンナーレ(パリ、パレ・ロワイヤル)に出品
1988
ギャラリー・ユニバース(東京)で日本初個展
1988-89
「20世紀イタリア具象彫刻」展が日本巡回
1991
ナポリのサン・テルモ城で大回顧展
1995
フィレンツェのフォルテ・ディ・ベルヴェデーレで大回顧展
ヴェネチア・ビエンナーレでド・フォルニ賞
1996
ミケランジェロ賞(ローマ)
2000
聖パードレ・ピオ教会「説教壇」制作開始(2002年完成)
2001
「ヴァンジ彫刻」展(箱根・彫刻の森美術館)
ピサ聖堂「説教台」「祭壇」制作
2002
ヴァンジ彫刻庭園美術館が静岡県に開館
高松宮殿下記念世界文化賞・彫刻部門受賞
現在、ペーザロとピエトラサンタを本拠に活動
2024
3月26日、イタリア・ペーザロにて死去
  • 大理石の採掘場にて

  • チューブの中の女 1967-68

  • 壁をよじ登る男 1970

  • 水の中を泳ぐ男 1984

  • 紫の服の男 1989

  • 聖ジョヴァンニ像

  • 敷居を越えて 1999

大理石の採掘場にて(イタリア、マッサ・カラーラ)
©The Sankei Shimbun 2002

チューブの中の女 1967-68
72×101×43cm ©梶原敏英

壁をよじ登る男 1970
211×170×82cm
©梶原敏英

水の中を泳ぐ男 1984
23×21×55cm ©梶原敏英

紫の服の男 1989
174×57×53cm
©梶原敏

聖ジョヴァンニ像、フィレンツェ市 1996
©The Sankei Shimbun 2002

敷居を越えて 1999、ヴァティカン美術館
©The Sankei Shimbun 2002