第28回
2016年
演劇・映像部門
Martin Scorsese
マーティン・スコセッシ
1970年代初めからアメリカ映画界の新進として注目された。生まれ育ったニューヨークを舞台に、暴力や裏社会を描く映画が多いが、信仰、誘惑、罪や贖罪など、道徳や宗教的なテーマを通じて、社会の暗部や人間精神の奥底をあぶり出していくのが特徴。1976年に『タクシードライバー』でカンヌ映画祭パルム・ドール、2006年に『ディパーテッド』でアカデミー賞を初受賞。1970年代から90年代初めにかけてはロバート・デ・ニーロ、21世紀に入ってからはレオナルド・ディカプリオと組んだ作品が多い。1990年には映画の補修・保存のための非営利組織「映画財団」を設立。黒澤明監督の『夢』(1990)にゴッホ役で出演した。最近はテレビドラマも手掛ける。27年前から映画化を考えていたという遠藤周作原作の映画『沈黙-サイレンス-』が今年12月末にアメリカで公開(日本は2017年公開)。
略歴
イタリア系アメリカ人として、ニューヨークのリトル・イタリー地区に育つ。幼少時はぜんそくのため、外で遊ぶ代わりに連れていかれた映画館で映画の魅力にとりつかれた。帰りには教会を訪れ、「8歳から30歳代の初めまでは神父になろうと思っていた」と振り返る。
ニューヨーク大学の映画学科に在学中から映画製作に取り組み、1970年代初めからアメリカ映画界の新進として注目された。ニューヨークを舞台に、暴力や裏社会を描く映画が多いが、信仰、誘惑、罪や贖罪など、道徳や宗教的なテーマを通じて、社会の暗部や人間精神の奥底をあぶり出していくのが特徴。
「暴力は深刻な問題であると同時に人間存在の一部。こうした事実を否定すると物事はさらに悪化する。真実の姿をできる限り正確に描写しなければならない」
1976年に『タクシードライバー』でカンヌ映画祭パルム・ドール、2006年に『ディパーテッド』でアカデミー賞を初受賞。1970年代から90年代初めにかけてはロバート・デ・ニーロ、21世紀に入ってからはレオナルド・ディカプリオと組んだ作品が多い。
デ・ニーロとは「お互いに似たところがあり、話さなくても分かり合える仲」で、そのデ・ニーロから「すごい若造がいる」と突然の電話があり、ディカプリオの起用を勧められたという。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)で「ディカプリオの役への情熱が最大に発揮された」。デ・ニーロとは「暗黒街の犯罪映画をもう一本撮りたい」と言う。
1990年に非営利組織「映画財団」を設立して以来、映画の補修・保存に尽力。『雨月物語』(溝口健二監督)の4Kデジタル修復も担当し、今年のカンヌ映画祭で上映された。最近はテレビドラマも手掛ける。
フランシス・フォード・コッポラ、スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカスなど多くの監督と交友があるが、自身にとっての重要人物は、60年代にインディペンデント映画で活躍したブライアン・デ・パルマ監督。日本では黒澤明監督の『夢』(1990)にゴッホ役で出演するなど、親交の深い監督は多く、「日本映画によって日本文化を知り、多くを学んだ」と語る。
最新作は遠藤周作原作の『沈黙-サイレンス-』。1980年代末に小説を読んで以来、映画化を熱望していた。「浅野忠信、塚本晋也、イッセー尾形、笈田ヨシ、窪塚洋介ら出演俳優の役に対する献身ぶりがすごい」と目を細める。米国では12月に公開(日本では2017年公開)。
略歴 年表
非営利組織「映画財団」を設立、映画の補修・保存に乗り出す
レオナルド・ディカプリオ初演
『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』でピーボディ賞
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シケリア・プロダクションズ内にて
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スコセッシ一家
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シケリア・プロダクションズ
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黒澤明監督と
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浅野忠信と
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オフィスにて