第15回
2003年
絵画部門
Bridget Riley
ブリジット・ライリー
ブリジット・ライリーは、眼の錯覚に訴える絵画「オプ・アート」の第一人者といわれる。その作品は色、形、コントラスト、進行、展開、反復といった要素が、均衡のうえに組み立てられており、幾何学的な縞模様や曲線が観る者に音楽的なリズムを感じさせる。1962年にデビューし、68年にはヴェネツィア・ビエンナーレで国際賞を受賞。世界中で大規模な個展が開かれており、80年には東京国立近代美術館でも開かれた。
略歴
ブリジット・ライリーは、1960年代半ばから、錯視効果を強調した抽象絵画である「オプ・アート」(視覚的美術、オプティカル・アートの略)の第一人者と呼ばれてきたが、ライリー自身は「オプ・アーティスト」という呼び名が、あまり好きではないという。
「私が現実にやっていることに対する大雑把な見方にすぎません。特に問題だと思うのは、《視覚》以外に何もないかのような言い方をすることです。精神的反応に関係なく、視覚だけが働いているのではありません」
ライリーの作品は、色、形、コントラスト、進行、展開、反復といった要素が、均衡のうえに組み立てられており、幾何学的な縞模様や曲線が観る者に音楽的なリズムを感じさせる。「詩的幻想の世界がある」との評もある。
ライリーは、イギリス南部のコーンウォールで少女時代を過ごした。大西洋に面し、美しい景観に恵まれたこの土地が、画家としての原点となる。
「潮の満ち引きや四季の移り変わりに深く思いを寄せることができました。気づかないうちに視覚的、美的な訓練になっていたのだと思います」
初めはスーラの点描主義の影響を受け、色彩と形態による純粋な視覚効果を探求したが、1981年のエジプト旅行で古代文明の色彩に大きな影響を受け、作品の色使いを変貌させ、独自の世界を切り開いていった。
20年前にはリバプールの病院の壁に癒し系の青、黄、ピンク、白の横帯を使った装飾を施し、陰気なインテリアを一新させ、病院内の落書きを減らしたこともある。
ロンドン市内にあるアトリエは、「色彩を明確にとらえることができるから」と、床、天井、壁、ドア、テーブル、イスなどが白いペンキで塗りつぶされている。
今秋の授賞式典出席が3度目の来日となるが、尾形光琳の『燕子花図(かきつばたず)屏風』を鑑賞したり、銀閣寺、竜安寺を再訪したいという。
略歴 年表
高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門受賞
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ロンドンのスタジオで
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Pause, 1964
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Blue Return, 1984
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By Way of Yellow, 1993
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Rêve, 1999