トップ 受賞者一覧 ジグマー・ポルケ

第14回

2002年

絵画部門

Sigmar Polke

ジグマー・ポルケ

写真や印刷技術のドットを使った作品やドイツ・ポップ・アート的作品の他、化学反応や温度などで変化する素材を用いて画面が変化していく絵画も描く。あらゆる素材を自由に使うところから、"アートの錬金術師"とも呼ばれる。旧チェコスロバキア(現ポーランド)で生まれ、45年に旧東ドイツに、53年に旧西ドイツに亡命。ヨーゼフ・ボイスに学んだ後、63年にデビュー。 1986年ヴェネツィア・ビエンナーレの金獅子賞受賞で一躍認められた。ドイツ・ケルン在住。授賞式が初来日になる。

略歴


ジグマー・ポルケは、あらゆる素材を自由に使う手法から、“アートの錬金術師”とも呼ばれる異才の画家である。素材同士が化学反応を起こしたり、温度や湿度により変化する素材を用いて、時とともに画面の色合いが変化していく絵画も描く。
1986年ヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞した作品群もその一つで、ドイツ・ケルン郊外のアプタイベルク美術館に所蔵されている。ポルケ自身、色の変化のチェックのため、今も定期的に訪れる。
「絵は化学物質や環境によって変わらなければなりません。作品に完成はなく、完成があるとすれば、それは作品が崩壊するときです」
ポルケは1941年、旧チェコスロバキア(現ポーランド)のシレジアで生まれ、45年に旧東ドイツに、53年に旧西ドイツに亡命した。「西側へ来た当時から、物事を批判的に見るということが私の中に残りました」
ヨーゼフ・ボイスが教えるデュッセルドルフのスタートリッヒ芸術学院で学んだ後、63年にデビューした。 当初は写真や印刷技術の網点(ドット)を使った作品やドイツ・ポップ・アート的作品で知られたが、その後、作品の題材、手法、スタイルをどんどん変え続けている。
「他人にはスタイルの変化と見えるかも知れませんが、芸術家は課題を非常に自由に扱える仕事で、もともとスタイルというものはないのです」
オランダのデ・ポント美術館に所蔵されている連作「ヘルメス・トリスメギストスI~IV」(95年)は、古代エジプトの錬金術師を描いたものだが、「私自身が錬金術的な仕事をする上で、この神話的な錬金術師は中心的な存在になりました」と語る。
ケルン市内にあるアトリエは、今年11月に米国テキサス州ダラスで開かれる展覧会のために制作中の作品で埋まっていた。授賞式が初来日になるが、「衛星写真を基に日本列島の気象図を題材にした作品を描きたい」などと語っている。
 
2010年、6月11日、ケルンにて逝去

略歴 年表

1941
旧チェコスロバキア・シレジア(現ポーランド)に生まれる
1945
旧東ドイツのテューリンゲンに移る
1953
一家で旧西ドイツに亡命
1961-67
デュッセルドルフの国立美術アカデミーで絵画を学ぶ
1963
ゲルハルト・リヒターらと資本主義リアリズムを標榜
1965
「ガールフレンズ」「ベルリナー」などドットによる作品を制作
1972
カッセルのドクメンタに出品
1975
サンパウロ・ビエンナーレで大賞受賞
1983
ドイツ・ボン美術館で回顧展
1986
ヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞受賞
1988
パリ市立近代美術館で大個展
1991-92
アメリカで初の大回顧展。サンフランシスコ、シカゴ、ワシントンを巡回
1992
東京・ワタリウム美術館「アイ・ラブ・アートⅡ」展に出品
1994
東京のワコウ・ワークス・オブ・アートで個展。「ホワイト・ルーム」制作
1995
英国のテート・ギャラリー・リバプール「ジョイン・ザ・ドット」展
1998
群馬県立近代美術館「ヨーロッパからの8人」展に出品
1999
ニューヨーク近代美術館「ワークス・オン・ペーパー 1963-74」展
2002
高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門受賞
2010
6月11日、ケルンにて逝去
  • ケルンのアトリエにて

  • アトリエにて

  • 無題(ペガサス)

  • 無題

  • ミラー・イメージ

  • ヘルメス・トリスメギストス

  • ホワイトルーム

ケルンのアトリエにて
©The Sankei Shimbun 2002

アトリエにて「ラテルナ・マギカ」シリーズの1作を手に
©The Sankei Shimbun 2002

無題(ペガサス)1977
180×150cm. ボン美術館

無題 1981
200×180cm ボン美術館

ミラー・イメージ 1986
500×300cm アプタイクベルク美術館(ケルン)

ヘルメス・トリスメギストス 1995
302.3×402.6cm デ・ポント美術館(オランダ)

ホワイトルーム 1994
240×200cm スペック・コレクション(写真提供 S.Polke)