トップ 受賞者一覧 アンネ=ゾフィー・ムター

第31回

2019年

音楽部門

Anne-Sophie Mutter

アンネ=ゾフィー・ムター

 現代最高のヴァイオリニストの一人で、「ヴァイオリンの女王」とも呼ばれるドイツ人演奏家。13歳でヘルベルト・フォン・カラヤンに見いだされデビュー。以後、カラヤン指揮のベルリン・フィルと共演を重ね、モーツァルトやベートーヴェンなどの名作協奏曲を演奏した。その後も、ズービン・メータ、小澤征爾ら世界の名指揮者・演奏家と共演。非常に細かい独特のビブラートなど卓越した演奏技術を持ち、ストラディバリウスが愛器。手掛けるレパートリーは幅広く、現代音楽に対する理解の広さでも知られる。後進音楽家の育成に力を注ぎ、東日本大震災の被災者らを支援する公演を実施するなど、積極的な教育・慈善活動は世界各地で評価され、揺るぎない人気を誇る。2017年、フランス芸術文化勲章コマンドゥールを受章。2019年、「音楽のノーベル賞」といわれるポーラー音楽賞(スウェーデン)に輝いた。

略歴


 現代最高のヴァイオリニストの一人。傑出した表現力と知識、巧みな演奏、音楽に対する愛情、そしてエレガントな雰囲気…。「ヴァイオリンの女王」とも呼ばれるドイツ人演奏家は、これら全てを兼ね備えている。
 13歳で大指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンに見いだされ、華麗なデビューを果たす。以後、カラヤン指揮のベルリン・フィルと何度も共演を重ね、モーツァルトやベートーヴェンなどの名作協奏曲を演奏した。「彼にとって、私が唯一のソロ・ヴァイオリニストだったことを知り、頭が下がると同時に、大変光栄に思います」
 その後もズービン・メータや小澤征爾をはじめ、世界の名指揮者・演奏家と共演。非常に細かい独特のビブラートなど卓越した演奏技術を持ち、数百台しか現存しないストラディバリウスが愛器だ。手掛けるレパートリーは幅広く、中でも新ウィーン楽派やバルトークなど近現代の音楽を得意とする。
 特に現代音楽に対する理解の広さでも知られ、クシシュトフ・ペンデレツキ(2004年、音楽部門)や武満徹なども演奏。ジョン・ウィリアムズとの共演では映画『スター・ウォーズ』の編曲作品も弾いた。「音楽家の崇高な使命は、聴衆を多彩な音楽の世界へ導く旅に誘い、教育することです。今後、何世紀にもわたり、演奏者、聴衆ともに音楽に対する理解を深める必要があるのです」
 後進音楽家の育成にも力を注ぐ。新しい才能を発掘する基金を1987年に立ち上げ、後に「アンネ=ゾフィー・ムター財団」に発展。指導や奨学金の支援などを行い、巨匠たちから受けた薫陶を次世代に託している。
 「大人になった私を動かしたのはカラヤン。偉大な師匠から学んだものは、次の世代に引き継がれるべきだと思わせてくれました」
 慈善活動も積極的に行い、東日本大震災の被災者やシリア難民らを支援する公演も実施。音楽活動、慈善・教育活動の両面で長年、高水準を保ち続けていることが世界各地で評価され、揺るぎない人気につながっている。2017年、フランス芸術文化勲章コマンドゥール受章。2019年、「音楽のノーベル賞」といわれるポーラー音楽賞に輝いた。
 音楽活動で世界各地を飛び回る一方、二人の子供を育て上げた。自身の家に日本庭園を造り、盆栽や俳句に親しむなど日本文化にも理解を示す。音楽から離れている時は、二匹の愛犬、ボニーとクライドと過ごす時間を大切にしている。

略歴 年表

1963
ドイツ・ラインフェルデン生まれ
1968
エルナ・ホーニヒベルガーに師事しヴァイオリンを学ぶ
1972
ヴィンタートゥール交響楽団(スイス)と初コンサート
1974
ヴィンタートゥール音楽院でアイダ・シュトゥッキに師事
1976
ルツェルン音楽祭(スイス)で世界デビュー、カラヤンの目に留まる
1977
カラヤンに招聘され、ザルツブルク精霊降臨祭音楽祭でベルリン・フィルと共演
1978
カラヤン指揮ベルリン・フィルと、モーツァルト『ヴァイオリン協奏曲第3番、5番』初録音
1980
ズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィルハーモニックと共演、米国デビュー
1981
カラヤン指揮ベルリン・フィルと初来日
1983
オックスフォード大学モーツァルト協会名誉会長
1986
英国王立音楽院名誉会員
1987
ルドルフ・エバーレ基金設立、ヨーロッパの若手育成の為の活動を始める
1988
北米大陸縦断コンサート・ツアーでカーネギー・ホールにデビュー
1993
ベルク『ヴァイオリン・コンサート』、リーム『タイム・チャント』で初のグラミー賞
1999
ベートーヴェン『ヴァイオリン・ソナタ』でグラミー賞、エコー賞
2001
カーネギー・ホールで、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲全曲演奏
2004
プレヴィン・ヴァイオリン協奏曲『アンネ=ゾフィー』、バーンスタイン『セレナーデ』で4度目のグラミー賞
2006
モーツァルト生誕250周年記念世界ツアー
2008
若手の世界的支援のため、アンネ=ゾフィー・ムター財団設立
エルンスト・フォン・シーメンス賞(ドイツ)
2009
ドイツ連邦共和国功労勲章一等功労十字勲章
レジオンドヌール勲章シュヴァリエ(フランス)
2011
財団の奨学生からなるアンサンブル「ムター・ヴィルトゥオージ」を発足、世界各地でコンサート
2013
アメリカ芸術科学アカデミー外国名誉会員
2014-15
カーネギー・ホールのパースペクティヴス・アーティスト
2017
フランス芸術文化勲章コマンドゥール
2018
ドイツ・グラモフォン創立120周年スペシャル・ガラ・コンサートで来日
2019
ポーラー音楽賞(スウェーデン)
  • ミュンヘンにて

  • ミュンヘンにて

  • ミュンヘンにて

  • 4個のグラミー賞トロフィーの前で

  • 小澤征爾と サントリーホール30周年記念ガラ・コンサート

ミュンヘンにて 2019年

ミュンヘンにて 2019年

ミュンヘンにて 2019年

4個のグラミー賞トロフィーの前で
ミュンヘン市内の事務所にて 2019年

小澤征爾と サントリーホール30周年記念ガラ・コンサート 2016年
提供:サントリーホール