第17回
2005年
彫刻部門
Issey Miyake
三宅 一生
1970年代、平面的な布を立体的な身体にフィットさせる「一枚の布」の概念で、世界に衝撃を与えた。以後、ファッションデザイナーの枠を超えて、人間の身体そのものの豊かな芸術性と可能性の追求に捧げてきた。服は身体を覆い隠すものではなく、身体を自他に再認識させるものと言う。88年発表の代表作「プリーツ・プリーズ」は造形的にも優れ、年齢や性別、体型、階層、国籍の拘束から身体を解き放つ服として高く評価された。現在はコンピューター技術を使い、筒型の布を着用者の好みで裁断、デザインを自由に変更できるブランド「A-POC」(エイポック=A Piece of Cloth)で、新たな「一枚の布」の可能性を追求している。
略歴
出発点は身体を包む一枚の布。それをファッションを超えた造形芸術へと高め、国際的名声を博してきた。今年のパリ・ポンピドー・センター「ビッグバン」展参加など、三宅作品は国内外で開かれる展覧会の度に注目を集める。「彫刻」を立体造形芸術と柔軟に見れば、この部門での受賞に何ら違和感はない。
三宅の名を一般に知らしめたのは、1993年に登場した代表作「プリーツ・プリーズ」。近未来的な軽やかさと鮮烈な色彩、個々の身体を入れて完成される造形美。しかも、コンパクトで旅行にも重宝する。
「ファッションは昔、典型的に社会階級を示す手段だったが、プリーツ・プリーズはそれをなくした」と評されるように、年齢や性別、体型、階層、国籍の拘束から身体を解き放つ服といえる。
オートクチュールのアシスタント時代に遭遇したパリ五月革命、その後渡ったニューヨークで出会ったヒッピー文化、多彩なアーティストとの交流の数々…。時代の波の中で、衣服デザインと服作りの既成概念を打ち砕いてきた。「最終的に行き着くところはジーンズとTシャツ。それを自分のスタイルで挑戦したかった」と振り返る。
平面的な布を立体的な身体にフィットさせる「一枚の布」の概念で衝撃を与えたが、その布も、日本の地方に残る伝統的な繊維技術と先端技術を融合させ、開発を重ねたものだ。身体と衣服をめぐる意識も独創的で、服は身体を覆い隠すものではなく、身体を自らに再認識させるものだと言う。
「服作りを進めるほどに、軽く薄くなり、裸体に近づいた。20世紀に衣服は第2の皮膚だったが、21世紀に入って皮膚や肉体こそ第2の衣服になった」と逆転現象を指摘する。
98年からはコンピューター技術を使い、すでに衣服の形が作られている筒状の布を着用者の好みで裁断、デザインを自由に変更できるブランド「A-POC」(エイポック=A Piece of Cloth)をスタート。「一枚の布」の可能性を追求し続けている。
略歴 年表
(東京、ロサンゼルス、サンフランシスコ、85年ロンドン)
「Issey Miyake A-UN」展(パリ・装飾美術館)
フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章シュバリエ章
「Issey Miyake Making Things」展
(パリ・カルティエ現代美術財団、99年NY・エースギャラリー、
2000年東京都現代美術館)
文化功労者に選ばれる
(ベルリン・VITRAデザイン美術館)
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アトリエにて
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パラダイス・ロスト 1976
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プラスティック・ボディ 1980
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リズムプリーツ、1989
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A-POC: kanazawa, 2004
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A-POC カマンベール、2004
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メイキング・シングス 1991