第28回
2016年
彫刻部門
Annette Messager
アネット・メサジェ
1970年代から身近な小物や雑誌、日用品などの日常の素材を使った作品を創作。1982年には、写真モンタージュとファンタジーを融合させた作品群《キマイラ》シリーズを発表した。その後、布、刺繍、編み物といった女性らしい素材と、動物のはく製や人体のパーツ写真を融合させた作品で注目を浴びる。既存のスタイルにとらわれない斬新な視点で、人間の相反する複雑な内面を浮き彫りにする。アウトサイダーとして「権威」への挑戦を続けるとともに、最近はフェミニズム運動をテーマにメッセージ性のある作品にも取り組んでいる。2005年にヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞。2008年に森美術館で日本初の大規模個展『アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち』を開催。浮世絵師・歌川国芳の手法を参考にするなど日本文化にも造詣が深い。
略歴
建築家でアマチュア画家だった父の影響で、幼少の頃から「クレヨンや絵の具を与えてもらい、よく絵を描いていたので、芸術はとても自然なことでした」と語る。
パリ国立高等装飾美術学校時代、写真コンクール優勝の副賞だった世界一周航空券を使い、南ヨーロッパやインド、イスラエル、ネパール、日本などを旅行、異文化の影響を受けた。卒業後、ジャン・デュビュッフェの前衛美術に感銘を受け、さらには1968年の「5月革命」による旧体制崩壊を目の当たりにし、美術は美術館といった「権威」ではなく、路上や日常にあると痛感したという。
翌1969年、パリで彫刻のインスタレーションと版画を発表し、注目を集めた。1970年代には日用品を集積した《コレクション》シリーズや、映画のポスターにヒントを得た《連続ドラマ》などを世に送り出す。1982年には、写真モンタージュとファンタジーを融合させた壮大な作品群《キマイラ》シリーズを発表。
その後、1990年代にかけては、ぬいぐるみや布、刺繍、編み物といった女性らしいモチーフや素材を駆使しつつ、人体のパーツを写したグロテスクな写真や動物の剥製などを融合させた「二面性」を強調する作品に移行。表現方法も「吊す」「浸透する」といった展示の可能性も探究した。
既存のスタイルにとらわれない斬新な視点で、人間の相反する複雑な内面を浮き彫りにする作品が多いが、「オブジェにも人間にも常に相反する裏側があります。私はいつも先入観なく空っぽな状態で創作を始め、見るものすべてを自分のものとして吸収します。芸術家は泥棒なのです」と話す。
21世紀に入ると、コンピューターを駆使した“動く作品”にも挑戦。2005年には、童話『ピノキオ』を原案にした作品群《カジノ》で、ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞。最近は、トップレスで抗議する女性集団(フェメン)のフェミニズム運動など、メッセージ性のある作品の制作にも取り組む。
2008年に森美術館で日本初の大規模個展『アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち』を開催。京友禅の着付けが大好きで、浮世絵師・歌川国芳の手法を参考にするなど日本の伝統文化にも造詣が深い。
略歴 年表
世界各地を巡回
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パリ郊外のアトリエにて
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≪禁止事項≫
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パリ郊外のアトリエ
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パリ郊外のアトリエにて
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≪チャンス≫
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パリ郊外のアトリエにて