トップ 受賞者一覧 ウィントン・マルサリス

第34回

2023年

音楽部門

Wynton Marsalis

ウィントン・マルサリス

 ジャズ・ミュージシャン、作曲家、バンド・リーダー。卓越したトランペット演奏で知られる。ニューオーリンズの音楽一家に育ち、6歳でトランペットを持つ。ジュリアード音楽院在学中の1980年に参加したアート・ブレイキー&ジャズ・ メッセンジャーズで注目される。1983年のグラミー賞でジャズ部門とクラシック部門を同時受賞。「黒人のジャズ」、「白人のクラシック」という固定観念を覆し、ジャズ界や音楽界全体に大きな影響を与えた。ジャズの教育者、提唱者として、若い世代のためのワークショップを開催。2005年アメリカ国民芸術勲章。19歳の初来日の際、ファーストアルバムの半分を東京で録音した。今年3月、新型コロナウイルス禍で延期されていた日本公演を成功させた。世界文化賞授賞式当日(10月18日)が62歳の誕生日。

略歴


 ジャズ・ミュージシャン、作曲家、バンド・リーダー。卓越したトランペット演奏で、ジャズをアメリカ独自の芸術として保存・発展させる活動を続け、クラシック界でも名高い。
 父はジャズ・ピアニストだったエリス・マルサリス。兄はサックス奏者、弟2人もそれぞれトロンボーンとドラムの奏者というニューオーリンズの音楽一家に育つ。6歳でトランペットを持ち、家で父からジャズを、学校でクラシックを学んだ。
 若くしてトランペット演奏の才能を発揮し、当時最年少の17歳でタングルウッド音楽センターに参加、優秀な金管楽器学生に贈られるハリー・シャピロ賞を受賞した。1979年にジュリアード音楽院へ入学、在学中に参加したアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズで広く注目される。
 19歳の時、ハービー・ハンコックのバンドの一員として初来日、同年にバンド・リーダーとしてもデビュー。ファーストアルバムの半分を東京で録音した。さらに自身のバンドを結成。作曲家としても才能を発揮し、ジャズとクラシックの作品を創作。『シンク・オブ・ワン』と『トランペット協奏曲』のソリストとして、1983年のグラミー賞でジャズ部門とクラシック部門を同時に初受賞した。
 技術的な熟練度と即興能力、ジャズの伝統に対する深い理解を示す作品群をリリース。奴隷制と自由をテーマにした『ブラッド・オン・ザ・フィールズ』で、ジャズ・ミュージシャンとしてピューリッツァー賞音楽部門を初受賞(1997年)。ニューヨーク・フィルハーモニックで『ザ・ジャングル』を発表(2016年)。「黒人のジャズ」、「白人のクラシック」という固定観念を覆し、ジャズとクラシックの新境地を開拓、音楽界全体に大きな影響を与えている。
 ジャズの教育者、提唱者としても知られ、若い世代のためのワークショップを開催。ジャズ・アット・リンカーンセンターの芸術監督、ジュリアード音楽院のジャズ・ディレクターも務める。アメリカ国民芸術勲章、アメリカ人文科学勲章。グラミー賞は9度受賞。
 新型コロナウイルス禍で延期されていた日本公演を2023年3月に成功させた。世界文化賞の授賞式当日(10月18日)は62歳の誕生日。「日本の人々や習慣、芸術における伝統に深い敬意を払い、長年のつながりがあるので、日本からの受賞は尚更、嬉しい」と語る。

略歴 年表

1961
アメリカ・ニューオーリンズ生まれ
1967
6歳で初めてトランペットを持つ
1975
ニューオーリンズ・フィルハーモニー交響楽団と共演
1979
ジュリアード音楽院入学
1980
アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに参加
1981
ハービー・ハンコック・カルテットに起用、東京で演奏(初来日)
ウィントン・マルサリス・クインテット結成
1982
ファーストアルバム『マルサリスの肖像』発表
1983
『シンク・オブ・ワン』 『トランペット協奏曲』 独奏で、グラミー賞ジャズ、クラシック両部門を初の同時受賞
1987
リンカーン・センターでのジャズ・プログラムを共同設立
1992
初のダンススコア『シティ・ムーブメント』(モダンバレエ)を録音
1996
「ジャズ・アット・リンカーン・センター」設立に伴い芸術監督就任
1997
『ブラッド・オン・ザ・フィールズ』でジャズ・ミュージシャンとして初のピューリッツァー賞(音楽部門)
エイヴリー・フィッシャー賞特別賞(リンカーン・センター)
2001
国連平和大使
2004
建設に尽力したジャズ専門施設「フレデリック・P・ローズホール」(リンカーン・センター)開館
2005
アメリカ国民芸術勲章
2009
レジオンドヌール勲章シュバリエ
ハーバード大学名誉博士号
2014
ジュリアード音楽院ジャズ・ディレクター
2015
アメリカ人文科学勲章
2015-22
コーネル大学で講義
2019
映画『ボールデン』のオリジナル・サウンドトラック
2021
アメリカ芸術文学アカデミー会員
2023
東京と大阪で来日公演『ウィントン・マルサリス・セプテット in Japan 2023』
フランツ・ウェルザー=メスト指揮、マイケル・サックスとクリーブランド管弦楽団との『トランペットとオーケストラのための協奏曲』世界初演
  • 『ブラッド・オン・ザ・フィールズ』の演奏 2013年

  • 父、エリス(左)と
    兄、ブランフォード(右)と共に

  • ジャズ・アット・リンカーンセンターにて
    2023年1月

  • ウィントン・マルサリス・セプテット
    2023年3月(大阪)

  • ジュリアード音楽院にて 2023年5月

  • ジュリアード音楽院にて 2023年5月

『ブラッド・オン・ザ・フィールズ』の演奏 2013年
ウィントン・マルサリス+ジャズ・アット・リンカーン・センター管弦楽団
フレデリック・P・ローズ・ホールでの公演より
Photo: Frank Stewart

ジャズピアニストの父、エリス(左)とサックス奏者の兄、ブランフォード(右)と共に
Photo: Luigi Beverelli

ジャズ・アット・リンカーンセンターにて 2023年1月
Photo: Lawrence Sumulong

ウィントン・マルサリス・セプテット 2023年3月(大阪)
Photo: Luigi Beverelli

ジュリアード音楽院にて 2023年5月
© The Japan Art Association / The Sankei Shimbun

ジュリアード音楽院にて 2023年5月
© The Japan Art Association / The Sankei Shimbun