トップ 受賞者一覧 リチャード・ハミルトン

第20回

2008年

絵画部門

Richard Hamilton

リチャード・ハミルトン

 1922年ロンドン生まれ。複数の美術学校で学んだあと芸術家としての活動をはじめる。1956年、アメリカに先駆けてポップ・アートの幕開けとされるコラージュ「いったい何が今日の家庭をこれほど変え、魅力的にしているのか?」を制作、その後も版画やコラージュ、デザインなどジャンルを超えた多様な創作活動を続ける。反芸術を標榜したマルセル・デュシャンを信奉。政治的メッセージを出すこともあり、最近では、ガンマン姿のトニー・ブレア前英首相を描いた「衝撃と畏怖」を制作、イラク戦争へのイギリスの派兵を批判した。ロンドン近郊のオックスフォードシャーの自宅兼アトリエには、大型のプリント機械やコンピューターを備え、創作意欲は衰えていない。

略歴

  アメリカのポップ・アーティスト、ロバート・ラウシェンバーグやアンディ・ウォーホルに先駆けて、1950年代にイギリスで、ポップ・アートの幕開けとされるコラージュを制作した。その後、版画やコラージュ、デザインなどジャンルを超えた多様な創作活動を続けている。
複数の美術学校で学んだ後、芸術家としての活動を始め、1950年代にロンドンの芸術家、批評家が文化を研究する集団「インディペンデント・グループ」で重要な役割を果たす。その企画展「これが明日だ」のカタログ用に制作したコラージュ「いったい何が今日の家庭をこれほど変え、魅力的にしているのか?」(1956)で、一躍、ポップ・アートの“生みの親”に。家電製品の雑誌や広告の写真に、ボディビルダーの男性などを加えて構成され、大衆消費文化の象徴的な物品にあふれた居間が表現されている。
当時、ハミルトン自身がポップ・アートについて「通俗的、一過性、使い捨て、低価格、大量生産的、若者向け、機知があり、セクシーでトリックがあり、華やかでビッグビジネス」と定義したが、今でも「この定義は、実に多くのアーティストが受け入れるようになり、きわめて正確だったと思う」と語る。
マスメディアや大衆消費社会を取り扱うハミルトンの作品は、現代文化や芸術に対する称賛なのか、あるいは批判なのか、という問いに対しては、「そのどちらでもない」と中立的な立場を強調するが、「現実の肯定」という面もある。
反芸術を標榜したフランス出身の美術家、マルセル・デュシャンを信奉し、彼のガラス製オブジェを「再構成」したほか、車などの消費物やマリリン・モンロー、ミック・ジャガーなどのスターを対象にした作品には、デュシャンのように偶像破壊的な作風も見られる。
作品を通じて、政治的デモンストレーションも行っており、2008年夏のスコットランドの展示会では、トニー・ブレア前英首相が両手に銃を持つガンマン姿の作品「衝撃と畏怖」を発表、イラク戦争に対するイギリスの派兵を批判した。
近年の自分自身を「隠遁者」と表現するが、最近はコンピューターによる制作も増えている。ロンドン近郊のオックスフォードシャーに広大な敷地を構える自宅兼アトリエには、大型のプリント機械や何台ものコンピューターを備え、創作への情熱は衰えていない。
 
2011年9月13日、英国内にて逝去

略歴 年表

1922
ロンドンに生まれる
1938-40
ロイヤル・アカデミー・スクールズで絵画を学ぶ
1941-45
製図工として働く
1948-51
スレード美術学校(ロンドン)に学ぶ
1956
コラージュ「一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか?」を制作
1965
マルセル・デュシャンの作品の再構成を始める
1966
テートギャラリーでデュシャンの回顧展を企画
1968
ポラロイド撮影による自画像シリーズの制作開始
ビートルズの「ホワイトアルバム」のジャケットをデザイン
1974
初めて日本訪問
1983
テートギャラリー(ロンドン)企画の版画展「リチャード・ハミルトン:イメージとプロセス 1952−1982」を各地で開催
1984
スウェーデンのコンピューター会社のコンピューターのデザインを始める
(1989年に最初のモデルが完成)
1987
BBC放送のためにクァンテル・コンピューターグラフィックスに関するフィルム「ペインティング・ウィズ・ライト」を作成
1992
テートギャラリーで回顧展
1993
ヴェネチア・ビエンナーレに英国代表として参加、金獅子賞を受賞
2003
ケルンのルートヴィヒ美術館で「自己反省」と題する作品展
2008
スコットランドで「プロテスト」をテーマにした個展
2011
9月13日、英国内にて逝去
  • アトリエにて

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  • アトリエにて 衝撃と畏怖

アトリエにて

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アトリエにて 衝撃と畏怖
2008年
©Richard Hamilton