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第19回

2007年

彫刻部門

Tony Cragg

トニー・クラッグ

 日常の道具、自然の物などを自在に使い、素材の形態や機能に着目しながら、人間と自然の関係をテーマにした作品を制作し続けている。英国の研究所に技術者として勤務していたが、アートに惹かれ、ロンドンの王立美術学校で学んだ。ドイツのヴッパータールに移住した1970年代後半から、プラスチックやガラス、合板などの素材を組み合わせて、人物や道具など新しい物体を連想させる作品を発表。ヴェネツィア・ビエンナーレなど多くの国際展にも出品、彫刻に新たな意味を見いだす80年代の「ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア」をリードした。近年は鉄やブロンズなどの素材を使い、作品のメッセージも一段と多様化。現在、創作活動に加えて、「彫刻公園」造りを2008年のオープン目指して、ヴッパータールの広大な林で進めている。

略歴

    日常の道具や自然の物など様々な素材を自在に使い、素材の形態や機能に着目しながら、人間と自然との関係をテーマにした作品を発表し続けている。
  英国リバプールに生まれ、研究所の技術者として勤務していたが、アートに惹かれ、ロンドンの王立美術学校で学んだ。「科学は観察の仕組みを示してくれるから、芸術にも役立つ」と、技術者体験の影響を否定しない。

  ドイツのデュッセルドルフ近くのヴッパータールに移住した1970年代後半から、プラスチックやガラス、合板などの素材を組み合わせて、人物や道具など新しい物体を連想させる作品を発表。「ありふれた物でも、新しい命を吹き込み、意義を付け加えることができる」と、イメージにとらわれない表現を次々に具体化した。

  1980年代の「ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア」のリーダー役として、彫刻の持つ新しい可能性を探った。「新しい素材を求めるよりも、素材を通して何が表現できるかを追い求めた。素材はオーケストラの楽器のようなもので、その可能性や表現能力を伸ばすことによって、新しいハーモニーと相乗効果を得ることができる」
  1978年からデュッセルドルフ芸術アカデミーで教壇にも立つ。88年にヴェネツィア・ビエンナーレでイギリス代表となり、同年、ターナー賞も受賞した。

  「芸術、特に彫刻は、世の中の決まり事や既成概念に対抗するだけではなく、異なるルールを持つべきだ」という持論の実践を常に心掛けている。
近年は、軍の旧修理工場を改造した町工場のようなアトリエで、15~20人の助手を指揮しながら、鉄やブロンズ、発泡スチロールなどを使い、生命の有機的な形をコンピューターで解析、立体化した作品も制作している。

  「最も面白い素材は、人間の心。外部のものに変化を加えると、自身の態度や考え方にも変化が起こる。この35年間で素材をいろいろ変えてきたが、素材も私を大きく変えてくれた」
  現在、創作活動に加えて、「彫刻公園」造りを2008年のオープン目指して、ヴッパータールの広大な林で進めている。「最初は私の作品を展示し、徐々に若い世代の作品も増やしていきたい」と、創作意欲はますます盛んだ。

略歴 年表

1949
イギリス・リバプールに生まれる
1966-68
国立天然ゴム生産調査機関の実験技師として働く
1969-73
グロスターシャー美術デザイン学校で美術を習い始める
ウインブルドン美術学校で学士号(‘73)
1977
王立美術学校で修士号修得、西ドイツ・ヴッパータールへ移住
1979
ロンドンのリッソン画廊で最初の個展
1982
東京都美術館他での「今日のイギリス美術」展出品のため来日
カッセルでのドクメンタ参加(‘87)
1987
ロンドンのヘイワード画廊での回顧展が注目を集める
1988
ターナー賞受賞
ヴェネチア・ビエンナーレにイギリス代表として参加
デュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に就任(翌年-2001副学長)
1994
王立アカデミー会員に推挙
1996
ハリファックスのヘンリー・ムーア財団での個展と、翌年のロンドンのホワイトチャペル画廊での個展が大成功を収める
1997
豊田市美術館で個展
1999
英王立アカデミー本部のあるバーリントン・ハウスで展示
2000
リバプールのテート画廊で個展
2002
大英帝国上級勲爵士号を受ける
2005
北京ビエンナーレで彫刻部門最高賞
2006
デュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に復帰
ドイツ・ヴッパータール在住
  • ヴッパータールのスタジオで

  • レッド・インディアン

  • ここより永遠に

  • タング・イン・チーク

  • シンバッド

  • ディクリネーション

  • アイム・アライブ

ヴッパータールのスタジオで
©The Sankei Shimbun 2007

レッド・インディアン
Red Indian, 1983

Courtesy of the Lisson Gallery

ここより永遠に
Here today Gone Tomorrow, 2002

タング・イン・チーク
Tongue in Cheek, 2002

シンバッド
Sinbad, 2003

ディクリネーション
Declination, 2005

アイム・アライブ
I'm Alive, 2005