第16回
2004年
絵画部門
Georg Baselitz
ゲオルク・バゼリッツ
ゲオルク・バゼリッツは、因習の打破を常に指向してきた画家だ。初期には、人物や動物の体を切断し、不自然にくっつけた「破損絵画」シリーズを展開。1969年からは、モチーフから自動的に連想される「意味」や「解釈」を拒絶するため、人物や風景の上下を逆転させて描く「さかさま絵画」の手法にたどり着く。取り上げるモチーフは、美術史やロシア社会主義、自身の生い立ちなど実に多様で、近年は彫刻や木版画なども手がけている。美術史に造詣が深く、200点に上るアフリカ彫刻のコレクションでも知られている。メキシコ、パリ、ロンドンなど、世界中で個展が開かれており、2004年にはボンで大規模な回顧展を開催。
略歴
ゲオルク・バゼリッツは旧東ドイツ生まれだが、20歳で東ベルリンから西ベルリンに移住したことで、米国の抽象表現主義をはじめとする西側絵画の洗礼を受ける。
因習的な思考の打破を訴え、初期には人間や動物の体を切断し、ずらして並べる「破損絵画」と呼ばれるシリーズを展開した。
1969年には、モチーフから自動的に連想される「意味」や「解釈」を拒絶するため、人物や風景の上下を逆転させて描く「さかさま絵画」という手法にたどり着いた。上下を失ったモチーフが、不可思議で新鮮なフォルムや色彩として、鑑賞者の目に飛び込んで来る。
「自画像と描かれた人物とを比較するような誤った見方を排除できる素晴らしい方法だ。残念なことに、使っているのは私だけなんだけどね」
「さかさま絵画」の制作方法については、「初めの頃はイーゼル(画架)や壁に絵をさかさまに架けて描くという手法を試していたが、15年前から床にキャンバスを置き、周囲を回りながら描くようになった。子供が夢中で絵を描いている時とまったく同じ方法だよ」と語る。
取り上げるモチーフは、美術史やロシア社会主義、自分の生い立ちにまつわる出来事など実に多様だ。しかし、バゼリッツは「モチーフは重要ではない」と言う。
「私の最大の関心事はテクニックだ。中央ヨーロッパやアフリカ、アジアのある時代、ある地域に生まれたテクニック。点描主義やキュビスム、表現主義といったものを調べ、私の作品の中に取り込んでいる」
絵画だけでなく、彫刻や版画の作品も高い評価を受けている。ベルリンから西260キロの古城に住み、最近は「自伝」を絵と彫刻で制作している。
10月の授賞式出席が、日本への初めての旅となる。「日本には17、8世紀には既に印象派や点描画法があった。学生時代に気づいて以来、ずっと興味を持っている」と語り、円空の木彫仏像のカタログを見ながら、日本文化を体験できる日を心待ちにしている。
略歴 年表
本名はハンス・ゲオルク・ケルン
パリ・ポンピドーセンターで「ドローイング展62-92年」
ロサンゼルス、ワシントン、ベルリン、ストックホルムも巡回
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さかさまの森 (1969)
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オレンジを食べる人Ⅲ
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画家の絵(1987-88)
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少年Ⅰ (1998)
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奇妙な形 (2002)
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昨日の写真 (2002)
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芸術・展示ホールでの回顧展