第27回
2015年
音楽部門
Mitsuko Uchida
内田 光子
日本生まれでロンドン在住の世界的ピアニスト。モーツァルト、シューベルト、シューマン、ベートーヴェンからシェーンベルク、ブーレーズまで幅広いレパートリーを持つ。特にモーツァルトに関しては「彼女ほどモーツァルトを弾きこなすピアニストはいない」といわれ、指揮も行う“弾き振り”も有名。1961年、12歳のときに外交官の父に同行してオーストリアに渡り、ウィーン音楽院でリヒャルト・ハウザーに師事。家族が引き揚げた後もウィーンにとどまり、数々の音楽コンクールで受賞を重ね、1972年、ロンドンに移住した。その演奏は、集中力と安定感、幅広い強弱の変化が特徴で、譜面を通して作曲家と心の“会話”を交わして得た独特の解釈を全身で表現する。マールボロ音楽祭芸術監督を務めるなど若手音楽家の育成にも尽力。今年11月には、サントリーホールで2年ぶりのリサイタルを開く。
略歴
天を貫くがごとき鮮烈な音、消え入りそうなはかない音…。日本生まれ、ロンドン在住の世界的ピアニストは、さまざまな音を恍惚の表情で、時に優雅に、時に激しく、指揮者がそうするように、全身を使って奏でる。
「過去の、現在の作曲家が紙の上に書いたことを解読することが、私たち演奏音楽家の出発点です」。楽譜を通して作曲家たちと“会話を交わす”ことによって、彼らが曲に込めた思いや意味を読み解いていく。言葉にすると簡単だが、実際にそれをするのは難しい。「実のところ、何の手掛かりもないことが多く、『理解できた』ということは絶対にないのです」
そんな中で、自分なりに見えてきたと思っているのが、モーツァルトとシューベルト。モーツァルトには、人間はどう動くのか、人間同士の関係、人間の奥に潜む心といった「人間世界」がある。シューベルトの場合は「だんだん消えていく魂」。そうしたものに、近づいていきたいという。「どの作曲家にも正直に向き合おう、と。ただそれだけです」
1961年、12歳のときに外交官の父に同行してオーストリアに渡り、ウィーン音楽院でリヒャルト・ハウザーに師事。家族が引き揚げた後もウィーンにとどまり、数々の音楽コンクールで受賞を重ね、1972年、ロンドンに移住した。
レパートリーは、モーツァルト、シューベルト、バッハ、ベートーヴェンなどドイツ・オーストリア圏の作曲家を中心にシェーンベルク、ブーレーズまでと幅広い。モーツァルトに関しては「彼女ほどモーツァルトを弾きこなすピアニストはいない」といわれ、ピアノを演奏しながらオーケストラを指揮する「弾き振り」も有名だ。
「たった一つの旋律を奏でることさえ難しいのに、演奏しながら指揮するなんて、死にそうなほど難しい。とにかく、楽譜に何が書かれているか、その理解に尽きます。ただ、どうやれば目の前の音楽家たちに自分の思いを効率よく伝えることができるか学ぶことができ、これは楽しい」
あくなき探究心とパワー。読み解きたい作曲家はまだまだ山ほどいる。そのエネルギーは「一途に音楽が好きで、他に関心がない」ことから生まれるという。「でも人生は短いのです。『あなたに何かあげる』と言われたら、私は『時間がほしい』と言います。もっと音楽を聴く時間、音楽について考える時間です」
マールボロ音楽祭芸術監督を務めるなど若手音楽家の育成にも熱心に取り組んでいる。音楽的には日本人演奏家の粋を超えているが、今も和の心を大事にする。今年11月には、サントリーホールで2年ぶりのリサイタルを開く。
略歴 年表
(1991年ニューヨークで)
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ロンドンの友人宅にて
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サントリーホールオープニングシリーズ
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クリーヴランド管弦楽団を指揮
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サントリーホールにて
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サントリーホールにて
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ノッティング・ヒルの街角にて