ジェームズ・タレル

James Turrell

プロフィール

 1960年代から今日まで、光と知覚の関係を一貫して探求する現代美術家。ポモナ・カレッジで数学と知覚心理学を、カリフォルニア大学大学院で美術を学び、クレアモント大学院大学で芸術修士号を取得した。矩形にくり貫かれた天井を見上げ、刻々と変化する空の色や光を体感する《スカイスペース》シリーズのように、人の知覚を静かに引き出す光の作品で知られる。1979年からライフワークとして取り組む《ローデン・クレーター》プロジェクトは、死火山の火口と内部に空間を作り、天体の運行に合わせて光を知覚するという壮大な計画で、2026年完成予定という。日本国内では香川県直島の「地中美術館」や「南寺」、金沢21世紀美術館、新潟県十日町市の《光の館》などに常設作品がある。

詳しく

 光と知覚の関係を一貫して探求している世界的な現代美術家。米カリフォルニア州クレアモントのポモナ・カレッジで数学と知覚心理学を、カリフォルニア大学アーバイン校大学院で美術を学び、クレアモント大学院大学で芸術修士号を取得した。飛行機を操縦し、航空力学や天文学にも精通。豊富な飛行体験は、創作にも少なからず結びついている。
 幼少期から光に魅せられてきたという。クエーカー教徒だった家族の影響も大きく、瞑想で「内に入って光を迎える」ように、「目を閉じた夢の中にも光は宿る。人間の内面と外界を結ぶ光を扱いたい」と話す。また「私は光が何を照らすかではなく、光そのものが啓示であることに興味がある」とも語り、「物質としての光」を可視化させるアイデアを追いかけてきた。
 1967年、米パサディナ美術館(現ノートン・サイモン美術館)で、初期の代表作《プロジェクション・ピース》による初個展を開催。プロジェクターによって幾何学形を室内に投影した同作品は、知覚や認識の変容を体感できるインスタレーション。以降、霧状の光がスクリーンのように覆う作品や、漆黒の部屋でかすかな光を感知させる作品など、人の知覚を静かに引き出す光の作品を次々に生み出した。
 世界各地に設置している《スカイスペース》シリーズの最新作が米マサチューセッツ現代美術館で2021年5月にオープンし、これまでに計102作が完成した。矩形にくり貫かれた天井を見上げ、刻々と変化する空の色や光を体感できる作品。空の光はやがて、自己の内側へと染み入ってゆく。まさに、人間の内面と外界を結ぶ光の存在が感じられる。
 雄大な自然を舞台にしたライフワークもある。アリゾナ州の火山帯に広大な土地を入手し、1979年から取り組む《ローデン・クレーター》プロジェクトだ。死火山の火口と内部にたくさんの部屋を作り、天体の運行に合わせて光を知覚するという壮大な計画で、2026年の完成に向け順調に進行中という。
 ホイットニー美術館(米)、パリ市立近代美術館、水戸芸術館現代美術センター、グッゲンハイム美術館(米)での個展やグループ展も含め、約500の展覧会を実現させてきた。日本国内では香川県直島の「地中美術館」や「南寺」、金沢21世紀美術館、新潟県十日町市の《光の館》などに常設作品がある。

略歴

  1943 アメリカ・ロサンゼルス生まれ
  1965 ポモナ・カレッジ知覚心理学学士号
  1965-66 カリフォルニア大学アーヴァイン校大学院で美術を学ぶ
  1966 光を使った実験的な作品制作を開始
  1967 パサデナ(現ノートン・サイモン)美術館で初の個展
  1973 クレアモント大学院大学芸術修士号
  1974 ≪スカイスペース≫シリーズの初作品を制作
  1979 ≪ローデン・クレーター≫プロジェクト着手(アリゾナ)
  1980 ホイットニー美術館で個展
  1983 パリ市近代美術館で個展
  1984 マッカーサー・フェローシップ(アメリカ)
  1990 ニューヨーク近代美術館で個展
  1995 日本で初の個展 『ジェームズ・タレル 未知の光へ』(水戸芸術館)
  1998 ウルフ賞(イスラエル)
  1999 ≪バックサイド・オブ・ザ・ムーン≫ 直島・家プロジェクト「南寺」
  2000 ≪光の館≫ 第1回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ(新潟)
  2002 トーマス・ジェファーソン・メダル(アメリカ)
  2004 ≪ブルー・プラネット・スカイ≫(金沢21世紀美術館)
  2006 フランス芸術文化勲章コマンドゥール
  2009 王立英国建築家協会フェロー
  2011 ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展 『イルミネーションズ』
  2013 アメリカ国民芸術勲章
  2021 ≪スカイスペース≫新作公開(マサチューセッツ現代美術館)