第27回
2015年
建築部門
Dominique Perrault
ドミニク・ペロー
新しい建築物を周囲の景観や歴史的背景を損なわずに溶け込ませることを一義にデザインする建築家。1989年、パリの『フランス国立図書館』(1995年完成)の国際コンペを36歳の若さで勝ち取る。本体を地中に埋め、その中心に庭園を造るという斬新なアイデアは当初、批判も浴びたが、徐々に評価を上げていった。メタル・メッシュ(金属の編み目)をふんだんに取り込んだ内装は、パートナーである芸術監督のガエル・ロリオ=プレヴォさんが担当した。以降、ドイツ・ベルリンの『自転車競技場・オリンピック水泳プール』、ルクセンブルクの『欧州連合司法裁判所』、フランス南部アルビの『アルビ・グランド劇場』などを手掛けた。進行中のプロジェクトは、ヴェルサイユ宮殿デュフォー館の増築・改修、パリのロンシャン競馬場の改修など。日本でも新潟・十日町の能舞台『バタフライ・パビリオン』、大阪・梅田の『大阪富国生命ビル』を設計した。
略歴
斬新で創造力に満ちた建築物を、周囲の景観や歴史的背景を損なわずに溶け込ませることを一義にデザインする建築家である。自らを「都市計画家」とも呼ぶ。建物を地中に潜り込ませ、メタル・メッシュ(金属の編み目)を随所に取り込んでいるのが特徴だ。
「出発点は、“空間”をいかにデザインするか、ということです。空間がなければ人は住めません。しかし、都市にとって空間とは厄介なものでもあります。この空間に、いかに“質”を与えるか、それが私のテーマなのです」
哲学的な話だが、その答えが冒頭の「周囲の景観やその場所・街の歴史的背景に調和した建築物」。所構わず、ただ斬新な建築物を造ればいい、という“自己完結”に陥ってはならず、「その街全体の都市設計までを、建築家は考えないといけない」という。
画家を志していたが25歳のとき、建築の道へ。1989年、ミッテラン大統領の採決で、パリの『フランス国立図書館』(1995年完成)の国際コンペを36歳の若さで勝ち取った。絵の経験は設計の仕事に生かされているが、「白紙を目の前にしたときの恐怖感を取り除いてくれる」と意外なところでも役立っている。
国際舞台に踊り出ることになった『フランス国立図書館』。敷地の4隅にタワー(高さ100メートル)を配し、本体の建物を地中に埋め、その中心に憩いの空間である庭園を造った。中央に庭が巡り、僧院やタワーが並ぶ大修道院をイメージしたものだ。あまりに斬新すぎて、当初は批判も浴びたが、コンペに敗れた一流建築家らが称賛するなど徐々に評価はアップ。メタル・メッシュをふんだんに使った内装は、パートナーである芸術監督、ガエル・ロリオ=プレヴォさんが担当した。
以降、二人三脚でドイツ・ベルリンの『自転車競技場・オリンピック水泳プール』、ルクセンブルクの『欧州連合司法裁判所』、フランス南部の世界遺産都市、アルビの『アルビ・グランド劇場』などのプロジェクトを手掛ける。
『アルビ・グランド劇場』では、メタル・メッシュを外装にも用い、建物全体を包み込むように覆った。劇場は、午前中は朝日を浴びて黄金色に輝き、夕暮れ時には建物内部の灯りを映してぼんやりとレンガ色に染まるなど、時間帯によってさまざまな表情を見せる。メタル・メッシュは、レンガ造りの古い家が並ぶ風情ある街並みの中に建物を溶け込ませ、また、南仏の強い日差しや風雨を避ける役割も果たしている。
現在、ヴェルサイユ宮殿デュフォー館、パリのロンシャン競馬場の改修を手掛けている。アジアにも活躍の場を広げており、日本では新潟・十日町の能舞台『バタフライ・パビリオン』、大阪・梅田の『大阪富国生命ビル』を、韓国ではソウルの『梨花女子大学キャンパス・センター』を設計した。日本食は「何でも好き」という日本びいきである。
略歴 年表
パリ市の都市計画庁(APUR)で働く
『梨花女子大学キャンパス・センター』(韓国・ソウル)完成
『欧州司法裁判所』(ルクセンブルク)完成
『大阪富国生命ビル』(大阪・梅田)完成
『DCタワー1』(オーストリア・ウィーン)完成
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『フランス国立図書館』にて
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『フランス国立図書館』
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『自転車競技場』
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『欧州連合司法裁判所』
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『大阪富国生命ビル』
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『アルビ・グランド劇場』