第16回
2004年
彫刻部門
Bruce Nauman
ブルース・ナウマン
ブルース・ナウマンは彫刻やネオン管、ビデオなど多彩な素材を駆使し、60年代後半からモダンアート界を代表する“鬼才”として、絶えず社会にメッセージを発信し続けてきた。発想は奇抜で、創作スタイルは広範。「100生きて死ね」(84年)などのネオン作品では言葉で、「目・鼻・耳をつつく」(94年)などのビデオ作品では人の顔を超スローモーションで撮影した身体でメッセージを表現し、素材を自在に操る。93年、彫刻を対象とするイスラエルのウルフ賞、99年ヴェネツィア・ビエンナーレの金獅子賞など数々の国際賞を受賞。米誌タイムで今年、「最も影響力のある世界の100人」の中に選ばれるなど、彼の創作への関心と期待は芸術界を超えて広がる。
略歴
1960年代後半からモダンアート界を牽引する一人として、絶えず社会にメッセージを発信し続けてきたブルース・ナウマンは、現在、米国ニューメキシコ州サンタフェ郊外のアトリエ兼牧場で、妻で画家のスーザン・ローゼンバーグさん、そして大好きな馬15頭や犬などの動物と共に暮らしている。
「朝起きてまず動物の世話と乗馬。朝食後にゆっくりとアトリエで創作を始めます」
テンガロンハットが似合うカウボーイ姿は、広大な牧場にすっかり溶け込んでいる。作品から放たれる攻撃的なイメージとは一転し、印象は物静か。大江健三郎を愛読する日本通でもある。
彫刻からネオン管、グラスファイバー、ビデオ、時には自分の体をも「素材」にしてしまう発想は奇抜。「本当の芸術家は神秘的な真実を明らかにすることで世界を助ける」(67年)、「100生きて死ね」(84年)など、ネオン菅で言葉を表現する作品を次々に発表する一方で、「道化師の拷問」(87年)や「目・耳・鼻をつつく」(94年)など、体でメッセージを表すビデオ作品を発表。
素材を巧みに操るナウマンは、難解な作品が多いコンセプチュアル・アートの世界においてさえ、「決まった創作スタイルを持たない芸術家」と評されてきた。
「それは本当です。時代につれてスタイルも変わる。アーティストとは、いつも容易に手に入る物を使うものだと思っています」という。
93年、彫刻を対象とするイスラエルのウルフ賞、99年ヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞など数々の国際賞を受賞。2004年には米誌タイムで、「最も影響力のある世界の100人」に選ばれるなど、ナウマンの創作への関心と期待は芸術界を超えて広がる。
04年10月、ロンドンのテイト・モダン美術館で開催された個展について、「これまでにない挑戦になる。『音』だけの展示です」と語っていた。常に見るものを驚かせ続ける鬼才は、さらなる「素材の可能性」を追及している。
今回、初来日がかない、香川県・直島を訪れた。安藤忠雄氏(1996年世界文化賞受賞者)の設計による美術館に所蔵されている彼の代表作「100生きて死ね」との約10年ぶりの再会を果たし、アメリカから遥か離れた日本の小さな島に、自分の作品が展示されていることに感激していた。
略歴 年表
ロサンゼルスで初個展
カッセル・ドクメンタに出品
イスラエル・ウルフ賞
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ニューメキシコ州サンタフェ郊外の自宅アトリエにて (2004)
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去るか立つか、立つか左に立つか(1971, Dia:Beacon)
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身体の圧力 (1974, Dia:Beacon)
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南米の円 (1981, Dia:Beacon)
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100生きて死ね 299.7×335.9×53.3cm(1984, アートサイト直島、香川県)
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100生きて死ね
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グリーン・ホース (1988, Sperone Westwater, NY)