第32回
2021年
建築部門
Glenn Murcutt
グレン・マーカット
オーストラリアの大地に根差し、気候風土や自然エネルギーを活かした持続可能な建築で知られる。幼少期をパプアニューギニアで過ごし、豪州の大学で建築を学んだ。1969年、シドニーに個人事務所を開設。妥協のない仕事をするために所員は抱えず、基本的に建築に関わる全過程を一人でこなす。出世作『マリー・ショート邸』(1975年)をはじめ、個人住宅を中心に450件以上のプロジェクトを手掛け、作品はすべて豪州内にある。自らはクリエイター(創造者)ではなく、発見者と説く。その土地の文化、光、風向き、地質、植生などを考慮し、いかに機能的で詩的な美を持つ建物に結実させるか-建築とは、観察し、見出す過程そのものだという。米プリツカー賞(2002年)、米国建築家協会ゴールドメダル(2009年)など受賞多数。豪州から初の世界文化賞受賞。
略歴
オーストラリアの大地に根差し、気候風土に寄り添う持続可能な建築で世界的に知られている。
ロンドンに生まれ幼少期をパプアニューギニアで過ごし、オーストラリア・シドニーで育った。建具業を営む父親を学生の頃から手伝い、海外の建築雑誌を読んでいたことで、自然に建築の道に進んだという。
現在の豪州ニューサウスウェールズ大学(UNSW)を卒業後、ギリシャやフィンランドなど欧州各地の建築を視察。帰国して建築事務所で経験を積み、1969年、シドニーに個人事務所を開設した。「妥協のない仕事」をするためにスタッフは抱えず、特別な協働を除いては、建築に関わる全過程を一人でこなす。
手掛けてきたのは主に個人住宅。クライアントは数年待ちが当たり前。豪州外で仕事をすることもない。「その国の言語を話し、文化や歴史を知り、気候、土壌、植生などを幅広く理解する必要があるから」と理由は明快だ。
使うのは、地元の木材や波形鋼板、石、ガラス、コンクリートといった簡素な素材。先住民族アボリジニの言葉「大地に軽く触れる」に倣うように、自然に寄り添うマーカット建築は、詩的な美しさと軽やかさを持つ。と同時にモダニズム建築の合理性、そしてエコロジカル(環境調和的)な知恵も随所に光る。
出世作『マリー・ショート/グレン・マーカット邸』(1975/1980年)は、東西に長い高床式の家屋。二重屋根の天窓や壁のルーバー(鎧戸)によって日差しや風の向きや量を調節でき、空調に頼らなくても快適に過ごせる。
こうした豊かな生活空間だけでなく、『アーサー&イヴォンヌ・ボイド教育センター』(1999年)や『オーストラリア・イスラミックセンター』(2016年)などの公共施設まで、450件以上のプロジェクトに関わってきた。
「素晴らしい建物は発見されるべきもので、創造されるものではない」と、自らはクリエイター(創造者)ではなく、発見者だと説く。土地の特性、光、材料をどうつなげるか-建築とは観察し、見出す過程そのものだという。
フィンランドのアルヴァ・アアルト・メダル(1992年)、米プリツカー賞(2002年)、米国建築家協会(AIA)ゴールドメダル(2009年)など受賞多数。世界文化賞受賞は豪州で初めて。国内外で後進の指導にも尽力し、現在、UNSW建築環境学部で名誉教授を務める。
略歴 年表
王立オーストラリア建築家協会(RAIA)ゴールド・メダル
王立英国建築家協会国際名誉フェロー
『アーサー&イヴォンヌ・ボイド教育センター』 (リバースデール)
-
『アーサー&イヴォンヌ・ボイド
教育センター』1999年 -
『サザン・ハイランズの住宅』2001年
-
『ウォルシュ邸』2005年
-
『オーストラリア・イスラミックセンター』
-
『オーストラリア・イスラミックセンター』
-
『マリー・ショート/グレン・マーカット邸』の前にて