第24回
2012年
建築部門
Henning Larsen
ヘニング・ラーセン
建物の天井や窓からふりそそぐ光が床や壁に反射し、空間を神々しく包み込む。周到に計算された光と空間の織りなす効果に、ラーセン建築の最大の特徴がある。「光の巨匠」と呼ばれ、デンマーク、北欧を代表する現代建築家だ。日照時間の短いデンマークで、光への敬虔な思いは幼少時に育まれたという。デンマーク王立アカデミー、マサチューセッツ工科大学などに学んだ後、事務所を構え、光を讃えた作品は各地のコンペを次々に勝ち抜く。『マルメ市立図書館』(スウェーデン、1997)、『オペラハウス』(コペンハーゲン、2005)など、光と空間の相互作用によって生み出される独創的な作品は常に注目を集めてきた。『サウジアラビア外務省』(リヤド、1984)など、陽光溢れる中東でも評価が高く、プロジェクトが目白押しだ。「私は子供のときから建築家になる運命だった」と語る87歳の巨匠は、若手建築家の育成に取り組む一方、大好きなバッハを聴きながら、スタッフと新プロジェクトについても議論を重ねている。デンマークからは初の世界文化賞受賞。
略歴
建物の天井や窓からふりそそぐ光が床や壁に反射し、空間を神々しく包み込む。周到に計算された光と空間が織りなす効果に、ヘニング・ラーセン建築の最大の特徴がある。「光の巨匠」と呼ばれ、デンマークはもちろん、北欧を代表する現代建築家だ。
「変わりやすいデンマークの天気は、刻々と姿を変える光のドラマを生み出す。雲の隙間からこぼれる太陽光線、夕刻の灰色の雲の下に広がる、ほとんど水平の光。自然空間は光によって創造される」
光と空間。その両者の魅力を存分に味わえる代表作の一つが、スウェーデンの『マルメ市立図書館』(1997)だ。4層分吹き抜けという思い切った空間が広がり、壁面はほぼ全面、ガラス張り。東側に隣接する公園の木々の濃いグリーンを、やわらかな光とともに館内に運んでくれる。時間とともに少しずつ変化する景色は、「光のカレンダー」とも呼ばれている
光への敬虔な思いは、デンマーク西部の田舎での幼少時に育まれた。日照時間の短いデンマークで、当時、唯一の明かりがランプ。炎が消えないように手入れをして大切に扱った。「太陽の光だけでなく、人工的に作り出される明かりにも夢中になった。どんな光も空間を生み、形づくるから」
デンマーク王立アカデミー、マサチューセッツ工科大学などに学んだ後、建築事務所を構え、光を讃えた作品は各地のコンペを次々に勝ち抜いていった。コンペへの積極的な参加が事務所発展の原動力となる。『サウジアラビア外務省』(リヤド、1984)など、陽光溢れる中東でも、独特な「採光」に評価が高く、今後のプロジェクトは目白押しだ。
コペンハーゲンでも、“光の回廊”が特徴の『新カールスバーグ彫刻美術館』(1996)、天井までの吹き抜け空間に、キューブのような小部屋をでこぼこと配置した『IT大学』(2004)、入江を挟んで、マルグレーテ2世女王が住むアマリエンボー宮殿の向かいに建つ『オペラハウス』(2005)など、その作品は常に注目を集めてきた。日本のプロジェクトがまだないので、参加の機会を狙っている。
次代を担う若手建築家の育成にも熱心で、「若い建築家たちには、海外に出て、とにかく多くの建築を見てきてほしい」と語る。私費を投じて2001年に「ヘニング・ラーセン財団」を設立。毎年、自身の誕生日に有望な建築家に奨励金を授与している。
コペンハーゲンの中心部にある建築事務所には、世界約20カ国から集まった建築家160人が働く。女性の登用にも積極的で、現在のCEO(最高経営責任者)も女性だ。87歳の巨匠は大好きなバッハを聴きながら、スタッフとの建築論議にも熱心に参加している。デンマークからは初の世界文化賞受賞。
略歴 年表
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『サウジアラビア外務省』
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『新カールスバーグ彫刻美術館』
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『マルメ市立図書館』
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『 I T大学』
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『オペラハウス』
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『オペラハウス』
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『ザ・ウェイヴ』