第34回
2023年
彫刻部門
Olafur Eliasson
オラファー・エリアソン
ベルリンとコペンハーゲンを拠点とする国際的アーティスト。色、光、霧など自然界の要素を取り込み、人の知覚や認識に揺さぶりをかける作品で知られる。デンマークと両親の故国であるアイスランドで育ち、1995年にデンマーク王立美術アカデミーを卒業。同年ベルリンで「スタジオ・オラファー・エリアソン」を設立。2003年、ヴェネツィア・ビエンナーレにデンマーク代表として参加。同年、テート・モダン(ロンドン)で行った巨大な夕陽を幻出させる《ウェザー・プロジェクト》で国際的に高評価を得た。近年は、グリーンランドから運んだ氷塊を都市の中に展示する《アイス・ウォッチ》(2014年)など、気候変動の危機に対し、人々に気づきと行動を促すプロジェクトを展開。2019年、国連開発計画(UNDP)の気候変動対策と持続可能な開発目標(SDGs)の親善大使に任命された。
略歴
ベルリンとコペンハーゲンを拠点に活動する美術作家。色、光、霧など自然界の要素を取り込み、人の知覚や認識に揺さぶりをかける作品で知られる。
デンマークとアイスランドで育ち、とりわけ自然豊かなアイスランドでの経験は後年、美術を通して地球環境問題に向き合う土台となった。「温暖化に対し行動が必要だと初めて耳にした時、私は直感的に理解できた。北極圏で自然のもろさを強く感じていたからでしょう」と振り返る。
デンマーク王立美術アカデミーを卒業した1995年にベルリンに移り、「スタジオ・オラファー・エリアソン」を設立。インスタレーションに絵画、彫刻、写真、映像など表現は多岐にわたる。水霧に光を当て、虹を出現させる初期の代表作《ビューティー》(1993年)など、観る人の内面に導く詩的な作品は高い評価を受けてきた。
2003年、ヴェネツィア・ビエンナーレにデンマーク代表として参加。同年、テート・モダン(ロンドン)で展開した《ウェザー・プロジェクト》は国際的な出世作。元発電所である同館の大空間(タービンホール)に巨大な夕陽を幻出させ、のべ200万人以上が訪れた。
これまで世界の主要美術館で個展を開き、公共空間で大型プロジェクトを行ってきた。ベルリンのスタジオは建築家やプログラマー、美術史家、料理人など100人(出身は20カ国以上)のスタッフを擁し、実験やリサーチ、作品制作、情報発信や記録など多様な活動を展開。その活動自体も、環境になるべく負荷をかけない工夫を凝らしている。
ソーラーLEDライト《リトルサン》(2012年)をエンジニアと共同開発し、未電化地域に提供を続けるなど、社会に変革を促す作品・プロジェクトに意欲的に取り組んでいる。一晩の明かりに軽油なら20㍉㍑必要だが、《リトルサン》なら5時間の日光による充電で5時間、明るく点灯するという。
また、グリーンランドから運んだ氷塊を都市の中に展示する《アイス・ウォッチ》(2014年)は、地球規模の気候変動に対して人々に気づきと行動を喚起させるプロジェクト。国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の開催都市などで行い、注目された。
「私たち一人一人にできるのは小さいことだが、間違いなく大きな変化をもたらす。アートは社会を変えられると私は100%信じている」と話す。2019年、国連開発計画(UNDP)の気候変動対策と持続可能な開発目標(SDGs)の親善大使に任命された。
略歴 年表
≪ウェザー・プロジェクト≫(ロンドン、テート・モダン、タービンホール)
国連開発計画(UNDP)親善大使
『ときに川は橋となる』(東京都現代美術館)
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《ビューティー》1993年
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《ウェザー・プロジェクト》2003年
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《ハルパ・レイキャビク・コンサートホール&会議センターのファサード》2005-2011年
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《リトルサン》を手にする少女
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アイ・ウェイウェイと万里の長城で 2014年
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《アイス・ウォッチ》2014 年