トップ 受賞者一覧 カトリーヌ・ドヌーヴ

第30回

2018年

演劇・映像部門

Catherine Deneuve

カトリーヌ・ドヌーヴ

 フランスを代表する女優。両親とも俳優の芸能一家に生まれ、中学生の頃から映画に出演。ジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964)で可憐なヒロインを演じ、一躍世界的スターになった。キャリアは半世紀を超え、出演作は100本以上。代表作は、ルイス・ブニュエル監督の『昼顔』(1967)、フランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』(2002)など。ヌーヴェルヴァーグの旗手フランソワ・トリュフォー監督の『終電車』(1980)、レジス・ヴァルニエ監督の『インドシナ』(1992)の演技で、セザール賞主演女優賞を2度獲得。『ヴァンドーム広場』(1998)では、ヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞した。社会的発言も活発で、2018年1月、セクハラ告発運動「#MeToo」を批判する女性文化人の寄稿に参加し、注目を集めた。
 ポートレート: © Carole Bellaiche / H&K

略歴


 ジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964)で可憐なヒロインを演じ、一躍世界的スターとなってから半世紀余り。凛とした美しさは変わらない。「まさか女優が一生の仕事になるとは思いませんでした」とほほ笑む。
 両親とも俳優という芸能一家に生まれ、中学生の頃から映画に出演してきた。「映画への愛着が沸いたのは、ドゥミ監督と出会ってからです。想像していたより魅力的な世界だと知った。彼と会っていなかったら、女優を続けていたかどうかは分かりません」と回想する。
 単なる美人女優に終わらなかったのは、常に一癖も二癖もある役柄に挑戦してきたからだ。
 シュールレアリスム派の巨匠ルイス・ブニュエル監督の『昼顔』(1967)でマゾヒスティックな妄想におぼれる人妻、英国人歌手デヴィッド・ボウイと共演した『ハンガー』(1983)では女吸血鬼に扮した。ヌーヴェルヴァーグの旗手フランソワ・トリュフォー監督の『終電車』(1980)で、セザール賞主演女優賞を受賞、フランス映画界を代表する女優の地位を不動にした。
 欧米各国の映画に出演してきたが、フランス映画への思い入れは強い。「映画は、その国の社会や暮らしと結びついています。フランス映画で登場人物はよくしゃべる。台詞がとても大切なのです。これに対し、米国映画はアクションが多い。大きな違いがあります」
 出演作は、常に脚本重視で選んできた。面白ければ、経験の少ない若手監督の作品でも積極的に出演する。社会的発言も活発だ。1971年、女性作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールやマルグリット・デュラスと共に、人工妊娠中絶の容認を求める公開書簡を発表。2018年1月にはセクハラ告発運動「#MeToo」に疑問を呈し、賛否両論を呼んだ。
 年齢を重ねることには、女優としてよい面と悪い面があると言う。「俳優は年齢や経験、出会いを重ね、役柄と共に進化します。悪い面といえば、時の変化を受け入れねばならないことでしょうか。見た目が大事な仕事ですからね」。2017年、日本で公開された『ルージュの手紙』では、老いや孤独に向き合いながら、人生を謳歌する母親役で円熟の演技を見せた。
 出演作は100本以上。「演じることが面白くなくなれば、辞めることを考えるでしょう。まだ、その時は来ていません」。これからも第一線を突っ走る。

略歴 年表

1943
パリで俳優の両親の間に生まれる
1957
映画デビュー『トワイライト・ガールズ』
1963
『悪徳の栄え』
1964
『シェルブールの雨傘』
1965
『反撥』(ロマン・ポランスキー監督)
1967
『ロシュフォールの恋人たち』
『昼顔』
1969
『幸せはパリで』
1972
『リスボン特急』
1975
『恋のモンマルトル』
『ハッスル』
1980
『終電車』(セザール賞主演女優賞)
1983
『ハンガー』
1992
『インドシナ』(セザール賞主演女優賞)
1998
『ヴァンドーム広場』(ヴェネツィア国際映画祭女優賞)
2000
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
2002
『8人の女たち』(ベルリン国際映画祭銀熊賞、ヨーロッパ映画賞女優賞)
『くたばれ!ハリウッド』(ロバート・エヴァンスのドキュメンタリー)
2008
『クリスマス・ストーリー』(カンヌ国際映画祭審査員特別賞)
2010
『しあわせの雨傘』
2013
ヨーロッパ映画賞生涯功労賞
2017
『ルージュの手紙』
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カトリーヌ・ドヌーヴ
© Carole Bellaiche / H&K