第29回
2017年
建築部門
Rafael Moneo
ラファエル・モネオ
スペインを代表する建築家。その土地の歴史的背景を重視しながら、環境と調和させて都市空間に溶け込む建築物をデザインする。スペイン・メリダの『国立古代ローマ博物館』(1986)で注目される。マドリードの『アトーチャ駅・新駅舎』(1992)、米ロサンゼルスの『天使のマリア大聖堂』(2002)、『プラド美術館新館』(2007)など国内外で多数のプロジェクトを成功させる。プラド美術館では新旧の建物を見事に融合させた。建築物は都市の一部に組み込まれることが重要な意味を持つと考える。自身のスタイルを強調することはないが、洗練されたデザインは作品を特徴づける。ハーバード大学で教鞭を執るなど教育者、理論家としても活躍。二度来日し、日本絵画や寺院などの伝統建築に魅了されたという。1996年プリツカー賞、2003 年王立英国建築家協会ゴールドメダルを受賞。
略歴
洗練されたデザインでありながら、敷地の歴史的背景を重視し、環境と調和させて都市空間に溶け込む建築物を生み出す。国内外に数々の建築物を手掛けているが、過去の成功例にはとらわれない。作品に自身のスタイルを強調することもない。
「建築物は、都市の一部に組み込まれることが重要な意味を持ちます。歴史的文化的背景を重んじながら、大きな“現実”を創造しなければならないのです」
初期のころから石やレンガを使っているのが特徴で、「建築を決定するのは形態より材料。建築家は誰でもデザインを始める前に最良の材料を求めるものです」。
父親の勧めで建築の勉強を始め、開眼した。スペイン・メリダの『国立古代ローマ博物館』(1986)で国際的に注目される。歴史や遺跡群、町並みの連なりに合わせ、ローマ時代さながらにレンガで壁を覆った。内部はレンガの内壁で仕切られ、アーチ型の入り口を連続させた。
マドリードにある『アトーチャ駅・新駅舎』(1992)の天井。その整然とした正方形の連なりにも象徴されるように、規則性のあるデザインの“連続”は作品の特徴の一つ。エレガントでモダンなデザインは、図らずも彼の作品であることを物語っている。
『プラド美術館新館』(2007)も手掛けた。赤レンガの四角い建物で、内装で目を引くのは、16世紀の「サン・ヘロニモ・エル・レアル修道院」を解体・移築した回廊。ガラス張りの天井の下で彫刻コレクションが展示されている。
ほかに『セビリア空港ターミナルビル』、『マヨルカ島ミロ財団』や、「宗教建築は大きな挑戦だった」というロサンゼルスの『天使のマリア大聖堂』など国内外で多数のプロジェクトを成功させている。
1996年にプリツカー賞、2003 年に王立英国建築家協会ゴールドメダルを受賞。その一方、教育者、理論家としての顔も持ち、米ハーバード大などで教鞭も執った。知的で穏やかな学者といったたたずまいの建築家はこう話す。
「1980−90年代はスペインの建築家にとって幸運な時代でした。健全な民主主義体制への変換期で、公共建築の需要が拡大したのです」
現在、建築界はかつての重要性を失っていると指摘する。後進には「建築はまずフォルムを与え、人間生活の質を高めることに専心すべきだ」と伝えたいという。
二度の来日で、日本絵画や寺院などの伝統建築に魅了されたという。
略歴 年表
『ピラール・イ・ジョアン・ミロ財団』(マヨルカ)
トーマス・ジェファーソン財団メダル受賞
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マドリードの事務所にて
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『バンキンテル銀行本店』
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『アトーチャ駅・新駅舎』
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『天使のマリア大聖堂』
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グレゴリオ・マラニョン産婦人科・小児科病院
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『プラド美術館新館』