アッバス・キアロスタミ

Abbas Kiarostami

プロフィール

  イラン映画を代表する監督の一人、アッバス・キアロスタミは、1987年に素人の子供を主人公にした「友だちのうちはどこ?」を発表し、注目を集めた。素人俳優ばかりを起用するのが特徴だが、彼らの伸びやかで、カメラの存在を忘れさせるリアルな演技に、観客は驚かされる。その後、「友だちのうちはどこ?」からさらに「そして人生は続く」「オリーブの林をぬけて」などイスラムの厳しい社会や自然を詩的に描いた作品で国際的な評価を固め、1997年、「桜桃の味」でカンヌ国際映画祭パルムドール(グランプリ)を受賞。最近は「10話」や「ABCアフリカ」「5 five」など、デジタルカメラの特性を最大限に活かした作品づくりで話題を呼んでいる。

詳しく

  アッバス・キアロスタミは、発展著しいイラン映画を代表する映画監督の一人だ。1987年に素人の子供を主人公にした「友だちのうちはどこ?」が海外で紹介されるや、その純粋で詩情豊かな映像表現によって世界の注目を集めた。
プロの俳優ではなく、素人を好んで起用するのが特徴だが、観客はスクリーンに登場する素人たちのリアルな演技に驚かされる。
「素人の実際のキャラクターに合わせて、私の構想を変えてしまうし、もともと脚本もない。自分の性格に近い役なら、彼らは素晴らしい役者になることができる」と言う。
1992年には、「友だちのうちはどこ?」の舞台となったコケール村に、主人公を演じた少年の消息を訪ねに行く「そして人生はつづく」を製作。さらに、この作品のワンシーンを発展させた「オリーブの林をぬけて」を発表し、作品が互いにリンクしていくユニークな製作スタイルと、人生を深く静かにながめる作品内容が大きな話題を呼んだ。
その後も、映画監督を詐称した男の裁判に密着し、関係者自身に犯行を再現させた「クローズ・アップ」などで高い評価を受け、1997年には、自殺を手助けしてくれる人間を探す男を描いた「桜桃の味」でカンヌ映画祭パルムドール(グランプリ)に輝いた。
キアロスタミの映画は、問題が解決されないまま終了することが多い。
「“お話”をする映画や、結論を出す映画を私は信じない。“終わり”を用意しないことで、劇場を出ても観客の頭の中で映画は続く。これが私の考える良い映画だ」
最近は「ABCアフリカ」「10話」といった作品で、長時間録画が可能で小型軽量なデジタルカメラを採用。その可能性に深く魅せられているようだ。

2004年には、15、6歳の時から傾倒しているという小津安二郎へのオマージュとして「5 five」を発表。また、ケン・ローチ(2003年世界文化賞受賞者)らと列車を舞台にしたオムニバス映画「チケット」を製作するなど、意欲的な活動を続けている。

略歴

  1940 イラン・テヘランに生まれる
  1958 テヘラン大学美術学部入学
  1960 コマーシャル・フィルム、ポスターのグラフィック・デザインなどを手掛ける
  1968 児童青少年知育協会に入り、映画製作部を創設
  1970 「パンと裏通り」で初監督
  1972-84 「1年生」など18作品を監督
  1987 「友だちのうちはどこ?」
  1990 「クローズ・アップ」
  1992 「そして人生はつづく」
  1994 「オリーブの林をぬけて」、カンヌ国際映画祭出品
  1997 「桜桃の味」でカンヌ国際映画祭パルムドール受賞
  1999 「風が吹くまま」でヴェネチア国際映画祭・審査員グランプリ受賞
  2001 「ABCアフリカ」、カンヌ国際映画祭に特別招待参加
  2002 「10話」
  2003 「5 five ~小津安二郎に捧げる~」
  2016 7月4日 パリにて逝去

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受賞記念展覧会 「アッバス・キアロスタミ写真展」

 

2004年10月19日-30日 坂倉準三メモリアルギャラリー サカ
2004年11月 6日-12月12日 箱根・彫刻の森美術館
主催:財団法人 日本美術協会 共催:彫刻の森美術館  後援:イラン大使館

 

10月19日から30日まで、東京・赤坂の坂倉準三メモリアルギャラリー・サカで、アッバス・キアロスタミ氏の受賞記念写真展が開催されました。

キアロスタミ氏は映画作品で国際的に高い評価を受けていますが、同時に写真で母国イランの自然の美しさを長年、撮影し続けてきました。このたび、受賞を記念してイラン各地のさまざまな「道」をとらえた36点を展示しました。

19日17時からのオープニングパーティには国際顧問のワイツゼッカー、ルアーズ両氏をはじめ、多くの人々が出席しました。キアロスタミ氏は「二週間に一回は写真を撮っている。なぜ道を撮るのか説明するのは難しい。観客が自由に感じてほしい」と語っていました。写真展はこの後、箱根・彫刻の森美術館に巡回しました。

 

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キアロスタミ氏      

 

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「 道 」

最近、写真が入っている引出しを開き、沢山の道を写して来た事に気がつきました。
私の映画にも沢山の道が描かれています。
「風が吹くまま」は「道」のシーンから始まります。

イランの詩の世界では「道」が深い意味を持っています。
「行く」と言う意味、「移住する」「ある一点からある一点に行く」と言う意味があります。

「道」には別れの悲しみと同時に、新しい場所に辿り着くという意味もあります。
私たちは、人生の中でいろいろな道を渡っていきます。
険しかったり、坂道だったり。
全ての道はある一点から始まり、一点に終わります。
そして、全ての道に物語があります。その道を通り、旅に出る人々の物語が。

 

アッバス・キアロスタミ

 

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